どう考えてもひどい話だ。公教育の政治的中立性が、こうも安易にひっくり返されてしまうとは。日本の教育はどうなっていくのか。時の権力に、いとも簡単に左右される教育のありようには、暗たんたる気持ちを抱かざるを得ない。
文部科学省が28日付で小中学校の新しい学習指導要領を告示した。2月15日に公表した改定案を修正。小学校音楽で、君が代を「指導する」から「歌えるよう指導する」に変えた。また、総則に道徳教育の目標として「我が国と郷土を愛し」との文言を付け加えるなど、愛国心教育をより強調するような内容となっている。
改定案の公表からわずか1カ月余り。その間に、すっかり書き換えられてしまった。政府、自民党内のタカ派による圧力に押し切られた結果というのだから、信じ難い話というほかない。
中央教育審議会が長期にわたり公開審議を続け、その結果まとめた改定案は何だったのか。中教審や国会で国民的論議となったテーマを政権与党との密室のやりとりで、あっという間に書き加えてしまう。国民のものである義務教育の内容を一部の政治勢力が力ずくで押し付けていいはずがない。
君が代について、改定案では単に「指導する」となっていたのを「歌えるよう指導する」と修正した。「歌えるよう」というからには当然、実際に歌わせなければならない。嫌がる児童にまで無理やり歌わせる、ということになるのは、憲法が規定する内心の自由との関連でも大いに疑問がある。
愛国心の問題についても、優れて心の問題だ。問題は、愛するにたる国かどうか、が問われているのではないか。決して強要できる性格のものではないはずだ。
さらに、「神話や伝承」(小学国語)、「国際貢献について考えさせる」(中学社会)、「政治及び宗教に関する教育を行う」(同)など、いずれも保守色の強い表現を書き加えている。どのテーマも中教審などで激論が交わされたもので、それが一部の意見で不透明なまま加筆されるというのは、どうしても納得がいかない。
文科省の責任は重大だ。
沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に関する検定意見の例を見てもそうだ。教科用図書検定審議会では専門家を交えた論議もなく、文科省の調査官の意見書がそのまま検定意見となった。つまり、極端に言えば国(文科省)の思う通りの教科書が作れることになる。これでは国定教科書と何ら変わらないではないか。
政権与党におもねるだけの文科省に存在意義はあるのか。教育は「国家100年の計」という。公教育への信頼を損なわせるような姑息(こそく)なやり方は、到底承服できない。
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