「昨年の地震を受けて考えを変えたということです」
27日午後、東電柏崎刈羽原発。中越沖地震後に実施した海域と陸域の地質調査の結果を発表した東電の担当者が厳しい表情を見せた。
確かに考え方は変わった。この日、新たに公表されたのは原発の耐震設計に影響を与えるとみられる八つの主要断層の長さ。88年に出された6、7号機の設置許可時に比べると、それぞれ長さが格段に伸びた。
例えば、中越沖地震の震源断層と見られるFB断層は最大8キロから30キロに。上越市沖でも二つの断層を「同時に活動する可能性がある」として計約48キロと評価した。
さらに、これまで東電が連動の可能性に消極的だった長岡平野西縁断層帯は、政府の地震調査研究推進本部の評価(全長約83キロ)を超える約90キロと評価し直した。
06年に原発の耐震指針が改訂されたことに加え、想定を超える地震動に見舞われ、長期の点検作業を余儀なくされたショックが東電の活断層評価を変えさせたと言える。寺沢徹哉広報部長は「より安全を求める立場に立って、必要な耐震補強をする。それが地域と社会の安全につながると思う」と自信を見せた。
だが、今回の調査結果に、異論も上がりそうだ。
原発の敷地がある西山丘陵は、地震後に約10センチの隆起が確認されている。それでも東電は今回、丘陵の下で断層が動いた可能性を否定。「原発の安全性に影響はないと考えられる」とした。しかし、地元原発反対3団体は「断層が動いた」という主張を強めている。
さらに問題となるのが、原発沖合の佐渡海盆に沿った断層の長さだ。東電は海盆の中央に長さ約30キロのFB断層の線を引いた。だが、東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)らは地震後、今回の震源断層が「40キロ以上になる」と指摘してきた。
東電は今回、原発近くの沖合では、渡辺教授らと同じくFB断層より陸側にある海底斜面の下に断層があるとした。しかし、北東の沖合では渡辺教授らの推定より、断層の長さを短く解釈している。
渡辺教授は27日、ネットで東電の報告を見て、首をひねった。「同じ斜面がなめらかに続いている場合は、地下探査で明瞭(めいりょう)に断層が見えなくても、地下深くで斜面に沿って断層が続いていると考えるべきだ」と東電の見解に疑問を投げかける。
東電は来月7、8日にそれぞれ刈羽村と柏崎市で住民説明会を開く方針だ。その場で住民の信頼を得られるのか--。寺沢部長は「地域への説明責任をしっかり果たしたい」と言い切るが……。=つづく
毎日新聞 2008年3月28日 地方版