あとがき
詳《くわ》しい事情は解《わか》りかねますが巻末にあとがきが載《の》るのは風が吹《ふ》けば桶屋《おけや》が儲《もう》かるくらいに疑念の余地もないほどデフォルト仕様のようであり、なおかつ「何ページ書いてもいいですよ」と狂喜乱舞《きょうきらんぶ》するようなことまで言っていただけたのですが、それはまたの機会に譲《ゆず》るとして、今回はせっかくですので収録された各話ごとにあとがきじみたものを書いてページを埋《う》めたいと思います。
全体的な感想としては、「一年が経《た》つのは早いが二ヶ月が経過するのはもっと早い」という、死ぬほど当たり前のことに終始することになるので割愛し、以下つれづれなるままに。
「涼宮ハルヒの退屈」
表題作にしてSOS団の連中が最も早く活字となったのがこれでありました。確か「涼宮ハルヒの憂鬱」が世に出る二ヶ月ほど前にザ・スニーカーに掲載《けいさい》されたんじゃなかったでしょうか。
いくら何でも本編が出る前に後日談を載せるのはいかがなものかと一人不安になっていたのですが、そのような些末《さまつ》な心配をしていたのはまさに僕一人であったらしく他の誰《だれ》も疑問を持っていなかったようなので一安心です。なにせひたすら勢いのままに書いてしまった話しなため、これまたいいのでしょうかと心配していたのですが、結局どこからも誰からもいいとも悪いとも言われず少なくとも僕の耳には届かず、じゃあまあいっかと自分を慰《なぐさ》めている次第《しだい》です。
ちなみに僕が人生で草野球に参加したのは、記憶《きおく》にある限りでは十回もありません。フライの捕れないセカンドとしてザルの名を欲しいままにしていたのは言うまでもないでしょう。ヒット打った記憶もないことに今更《いまさら》気付き、遅《おそ》まきながら愕然《がくぜん》としています。
「笹の葉ラプソディ」
最初につけた仮題は「朝比奈みくるの困惑」というものでした。それじゃイマイチシリーズタイトルが解りにくいという話だったので、このようなサブタイトルになりました。この時はまさか読み切り短編の掲載が続くとも思っておらず、雑誌掲載時の最後のページに「次号に続く」みたいなことが書いてあって仰天《ぎょうてん》した覚えは鮮明《せんめい》に残っています。
いちおう未来人がいるんだし、タイムトラベルの一つもしないと話になるまいと思いつつ書きましたが、このエピソードが次巻以降のなんとなく伏線《ふくせん》っぽいことになりそうな気配に――なって欲しいとぼんやり考えています。
「ミステリックサイン」
わけあってアイデア出しから書き終えるまでの私的最短時間記録を作ったように思います。いったい連中に何させましょうかねえと言いながら、気付いたらこんな感じになっていました。この辺りからシリーズタイトルそのものを「がんばれ長門さん」にしようかと思い始めたのですが、それだとストーリーがまったく動きそうになかったので断念しました。でもまあ、メンツの中では一番|活躍《かつやく》してくれそうなキャラではあります。我ながら期待しています。いやホント、頼《たの》むよ長門さん。ところで眼鏡《めがね》はどうしましょう。あったほうがいいのでしょうか。
コンピュータ研部長にももうちょっと活躍していただきたいところですが、今のところ漠然《ばくぜん》とそう思っているだけなのでどうなることかと。
「孤島症候群」
本当は「ミステリックサイン」よりも前に書き始めてて、こっちが掲載される予定にまでなっていたのですが、書いているうちになぜかどんどん長くなってしまうという自己責任による諸事情で文庫のオマケ書下ろしという体裁になりました。そんなわけでこの本の収録作品で最も長いページ数を誇《ほこ》るという、なんとなく帯に短しタスキに長し的なオマケとなってしまい、反省するところ大であります。いつもどうにかしようと思ってるんですが、思うだけなら楽勝であって実際に思い通りになることなど人生振《ふ》り返ってみても数えるほどしかありません。そのような理由により現在の僕は脳ミソがアメーバー状になっています。
誰か僕を孤島《ことう》の豪華《ごうか》宿泊《しゅくはく》施設《しせつ》に一週間ほど泊《と》めてくれないものでしょうか。証人の役くらいならなんとかこなせないこともないと思います。ほぼ一日中|眠《ねむ》っていることでしょうが。
こんな感じで三巻目を出していただくことができました。これもひとえに皆様《みなさま》のおかげであると申せましょう。皆様のところには本当に様々な方々の名称《めいしょう》や役職やニックネームをルビにして並び称したいのですが、とにかく不特定多数の読者様を含《ふく》め僕が知ることのできた方々や名を知りようもない方々すべてを含む皆様ですので、とうてい記載し切れるものではなく、伏《ふ》してお詫《わ》び申し上げつつ厚く御礼《おれい》申し上げます。
それではまた、どこかで。
<初出>
涼宮ハルヒの退屈……………「ザ・スニーカー」 二〇〇三年六月号
笹の葉ラプソディ……………「ザ・スニーカー」 二〇〇三年八月号
ミステリックサイン…………「ザ・スニーカー」 二〇〇三年十月号
孤島症候群…………………… 書き下ろし