2008年3月29日

動くプールがあるのです。もう、大興奮です。初めて見ました。
ジャクージでもなく、アイスバスでもなく、プール。３×５メートルほどの大きさで、
そして、深い。階段もないから、
「こんなん入られへん！」と叫んだら、
トレーナ−が得意そうに、
「まあ、見てろ」と、リモコンスイッチを取り出しました。
おお、みるみるうちに、プールの底がせり上がってくるではありませんか！
用途に応じて、深さが変えられるプールです。以前ラスベガスで観た、
「シーク・ド・ソレイユ」の「Ｏ（オー）」というショーを思い出しました。
舞台にプールがあって、それが場面の転換とともに、徐々に浅くなり、
最後は消えていくのです。ちょうどそんな感じで、気分はすっかりサーカスの団員。

さらに、プールの底が、ベルトコンベアのように動く。
水中をずっと歩けるようになっているのです。
そして、水中カメラが、その様子を映し出し、自分の歩くバランスや
脚の使い方などをチェックできる仕組み。
ジェット水流が前方から吹き出てくるのは「お約束」で、その抵抗に向かって
延々と、「その場泳ぎ」をすることもできます。

今日は三塁ベースコーチのスティーブ（スミス）が３０分ほどそこで泳いでいました。
しかし、水中眼鏡を吹き飛ばしそうな勢いの水流をモロに顔面に受け、
「あぶぶぶぶぶうわわわわわあ」という状態になるらしいのです。
ジェットコースターなどで、顔が風圧で曲がってしまう、あれの水中版です。
「ここで泳がないほうがいいよ」と彼。
「顔が疲れる」

僕は素直に彼の忠告を聞くつもりでいます。
そもそも、泳がれへんし。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年3月28日

初めての本拠地での試合は、ナイトゲームでした。
やっぱり寒い。とても寒い。観客の「毛糸帽子」「毛布かぶり」が、視覚的にも寒さを
感じさせます。
「シチズンズ・バンク・パーク」は、広すぎず、狭すぎず、で、守りやすそうな球場です。
そして、雰囲気がいい。何か「いい」かは感覚的なものなので、お伝えするのが
大変難しいのですが、今後また書いていきますね。

とにかく、僕にとっては、フロリダから移動してきたチーム、スタッフが、丸ごと
違う「いれもの（球場）」に入ったようなものですが、寛とヨメにとってはまさに転校生の
一日目。寛はファミリールームの入り口で大泣きして、
「ママもね、とっても緊張しているし怖いの。だから一緒に入ってくれる？」という
ヨメの一言で、やっと納得したとのこと。
日本、キャンプ地、本拠地と、年間３回も学校を替わらなければならない寛は、
大きくなるにつれ、友達との別れを惜しみ、新しい環境への恐怖も
大きくなっているようです。どこかに基盤となる土地を決めて、僕が単身赴任すれば
済むことですが、やっぱり一緒にいたい。
「いろんな場所に行けて、いろんな経験ができてよかったね」というのは、あくまでも
大人の理屈なのでしょう。

もっとも、試合が終わる頃は、きゃっきゃ言って遊んでいたらしいのですが。

一方のヨメは、「どこかで見たような女性」と２時間近く話し込み、
最後の最後にそれが監督の奥さんだった、と気付いて、心の中で大慌てしたとか。
「会ったやろ！パーティーで！話しとったやないか！」と言ってみたものの、
僕のように「新しい人々」と毎日会っているわけではないので、
一気に全部覚えろというのも、無理な話かもしれません。

そして、やっと全部覚えた頃に、シーズンは終わるのです。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年3月27日

フィラデルフィアに戻るチームバス、そしてチャーター機は、ご家族連れでごった返していました。
なぜか２歳以下の子供が多いこのチーム。どこかで誰かの赤ちゃんが泣くと、それに呼応するように
他の赤ちゃんも泣く。泣く泣く泣く。おかげで今日初めて、寛がものすごく静かな子供に見えました。

圧巻だったのは、モイヤー（ジェイミー・モイヤー・投手）一家です。
７人の子供を引き連れてのご搭乗。７人目の養子ちゃん以外は、
そろいも揃って、全員ジェイミーにそっくり。その軍団が、機内をうろうろする
様は、見ごたえがありました。機内の通路を歩いているのが、キャビンアテンダントより
モイヤー家のほうが多いのです。しかも、着席するなり、ばばばっと取り出したのが、
ＤＶＤプレーヤー、全員分。さすが大ベテランの子供は、そのあたりの
新人野球選手より、よっぽど移動に慣れています。

１２月の末に４歳になった寛は、一緒に移動するのがずいぶんラクになりました。
これまではまわりに迷惑をかけるんではないかとハラハラしっぱなしで、
それゆえにチャーターに乗せるのがためらわれたのですが、食べ物さえ
与えておけば、なんとか静かにしてくれます。
しかし、お気に入りのプリッツェルがなくなってしまったからさあ大変。
「かんくんはもっとプリッツェルがたべたいです」
「今、乗務員のみなさんは忙しいの。誰か来たら頼んであげるから」
「あ、きたのでそのひとにたのんでください」
「わかったわかった。すみませーん・・・」見上げたら、そこには広報のフランクが。
うっかり「ついでに水もお願いします」と言うところやった・・・。

無事にフロリダでのキャンプも終了し、気温２８度のクリアウオーターから、現在８度のフィラデルフィアへ。
明日からは、初めて足を踏み入れる「ホーム」でのオープン戦が続きます。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

田口選手宛のファンレターはこちらまで　letter@taguchiso.com