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『ちりとてちん』は少し前の上方落語の世界が舞台ですが、最近の上方落語の状況は?
「天満天神繁昌亭ができてえら変わりですね。チケット取れないんですよ。こんなことは考えられなくて。繁昌亭ができる直前まで、みんな「大丈夫か?」って言ってたんですよ。客は来るのかと。たぶんね、半分以上の落語家はもって1年かなとか思ってたと思います。でも、ちゃんと面白い落語さえやったら、ほんま口コミでね、お客さんは来てくれるやろなっていう気持ちはあったんですけれど、216席っていう繁昌亭まで広げると、思ってた僕でも自信がなかったです。昔はみんなが落語っていうものを知ってたと思うんですよ。でも、若い人は、行く、行かないという前に、まずイメージできてなかったと思うんですよね、落語というものを。でも、「タイガー&ドラゴン」やったり、「しゃべれどもしゃべれども」やったり、この「ちりとてちん」だったり、そういう作品の影響で、落語に興味を持っていただけるようになりましたんで。それでお客さんは増えてますし、僕ら世代は、やっぱりこれから、来た人に、何にもお目あてなく来た人にも「あ、吉弥っておもしろいな」と言ってもらえるようにもうひとつ階段を上らないといけないと思うんです」
脚本がよく描けていると思うところは?
「落語家が見ても「あ、よく描いてはるな」と思うのは、僕は一番弟子で、草々、小草若というのがいて、四草というのがいて、あのへんに対する師匠の言葉のかけかたというのが、あの、一番弟子の草原とか、草々なんかはほったらかしなんですね。で、おそらく、それは一番最初の弟子時代に、自分も初めての師匠や弟子やっていう緊張感もあるから、けっこうしっかりしつけもしてるし、一番弟子、二番弟子には「あ、結構俺のことわかってくれてるな」みたいな「言わんでもええ」みたいなところがあるんでしょうね。ですから、ちょっと草々君なんかには冷たいようなところがあって、草原が戻ってきても、あんまり「草原、こうやがな」みたいなんじゃなくて、ちょろっとヒントだけ、僕に渡して去るみたいなね。それがやっぱり四草だったりとか、喜代美だったりとかには、本当に子供見るみたいに面白がってはって、目を見て声をかけるみたいなね。そういうやっぱり1番から5番まで弟子に対する立ち場が違うし、師匠との接し方も違う違うみたいなところが、すごくよく描かれてますわ」
役者として落語家の草原役を演じられていますが、ご感想は?
「楽しいですね。まったく違う落語家さんを演じることができるので。口下手であがり症で、落語があまりうまくないという役なんで、最初はどうしようと思ったんですけど、でもやっぱり初めて高座にあがったときはもちろん、今、役者のみんながやってるように、自分も最初は必死でやってたわけですから、その頃のことを思い出して、ぎゅっと広げて演じてます。俺はあのとき弟弟子に怒れへんかったけど、ここは台本にも書いてあるし、思い切り怒ったろ!とかね、あのときは優しくしてやれへんかったから、ここではやさしくしたろとかね。僕は一回、弟弟子、兄弟子、そして師匠と弟子という関係を経験をしてるんで、それと違うことをできるんで楽しんでやれてますね」
草原として今後の見せ場は?
「今のところ、草原はよくかんでるんですけれど(笑)、いずれ、ちょっとかっこよく落語をするシーンなんかも出てくるかなというのもありますんで、そのへんは楽しみにしていただいて。それで、僕は今回、こうして落語家としてドラマに入れていただいて、やっぱり自分の役目として、兄弟子ってどういう感じなのかとか、弟子のけんかを見ているときの師匠というのはどんな感じなんかとか、そのとき一番上の弟子はどういう顔なのかとか、フィクションですけれど、どこかリアルな味付けをちょっとづつ落としていければと思ってますので、そのへんも見ていただきたいですね」
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●photo/南 伸一郎 |
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