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社説:民主党 改革とは何かの原点に戻れ

 租税特別措置法改正案をめぐり与野党は28日、衆参両院議長の要請を受けて土地売買にかかる登録免許税の減免措置などに関し、期限切れ回避で合意した。だが、ガソリン税の暫定税率問題は何ら進展しなかった。09年度に道路特定財源を廃止するとの福田康夫首相の新提案を受け、私たちは民主党にも歩み寄りを求めたが、聞く耳は持たないようだ。

 もう一度、話を整理したい。道路特定財源の改革こそ問題の「本丸」だということは民主党自身が訴えていたのではなかったか。

 特定財源という特別な財布を国土交通省が持つことで厳しいチェックを受けずに道路が建設され続け、政官業の癒着も生まれる。それは自民党政治の象徴であり、改革は国のかたちを変えることになると民主党は主張してきた。

 福田首相が今回、廃止を表明したのは、民主党など野党がこの問題に力を注いできた大きな成果だと評価する。実現すれば硬直化している予算の改革につながり福祉や教育など本当に必要な分野に多くの予算が回せるようになるだろう。しかし、民主党の小沢一郎代表は28日も「暫定税率維持が首相の主張で、(会談しても)かみ合わない」と語り、暫定税率の即時撤廃は譲らない考えだ。

 ガソリンの値下げに期待している人は多いだろう。ただ、苦しい国民生活への配慮は当然だが、原油価格で大きく変動する不安定な要素を持つガソリンへの税金でなく、別の政策、施策で手当てするのが筋だ。

 適正な税率とはどの程度か。厳しい財政事情に加えて、脱石油、脱炭素社会の構築という地球規模の観点も必要な時代だ。首相は環境税などへの衣替えも視野に税制自体の見直しも表明している。折り合う余地がないとは思えない。

 それでも拒否するのは、いったん下がったガソリン代が衆院の再可決で再び上がり、福田政権が国民の批判を浴びるから次期衆院選に有利になると期待していると見るほかない。

 民主党は05年の衆院選マニフェストで「年金目的消費税」を導入する事実上の消費税引き上げ策を掲げていた。改革のためには増税も堂々と提示する姿勢が看板の一つだったのだ。

 その姿勢は小沢代表が就任してから一変した。暫定税率廃止を重視し始めたのも小沢体制になってからだ。小沢氏は選挙前に増税を口にするのは愚策というのだろう。だが、国民の意識はそんなに単純だろうか。

 一般財源化には自民党内にも異論は多い。ここで与野党で一気に合意した方が確実に実現するという発想もある。評価すべき改革は後押しをする。むしろ、その方が安心して「民主党に一度、政権を任せてみよう」と思う人は増えるのではないだろうか。私たちはそう考えている。

毎日新聞 2008年3月29日 東京朝刊

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