東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 神奈川 > 3月29日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【神奈川】

横浜市大・学部長の医局員ら 『内部通報者の追及を』 異例の申し入れ書提出

2008年3月29日

 横浜市立大学(金沢区)の嶋田紘医学部長(64)による金銭授受問題で、嶋田学部長が率いる医局の医局員が連名で、一連の問題を大学側に内部通報した医局関係者の厳しい責任追及を求める申し入れ書を大学に提出していたことが二十八日、分かった。通報者の保護を定めた同大の規程に反する異例の内容で、医局内部と世間の常識の大きなズレが、またも露呈した。 (中山高志、小川慎一)

 本紙が入手した資料などによると、申し入れ書は二月十二日付で大学理事長、学長あてに提出された。嶋田学部長が教える大学院医学研究科教室の准教授をはじめ、医局員計十一人が署名している。

 申し入れ書は「医局は、経験したことのない危機に直面している」との表現で始まり、博士号取得をめぐる謝礼金の授受問題などを指摘した内部通報について「医局内の出来事を、悪意により歪曲(わいきょく)しなければ作れない」と批判している。

 さらに、既に数人の医局員が警察から任意の事情聴取を受けたことを明かし、「事情聴取は過酷を極め、時に医師としてのプライドを大きく傷つけるものであり、今後の診療を不能にする可能性がある」と不快感を強調。

 内部通報者について「仲間を犯罪者に引きずり降ろそうとする人間と、今後も職場をともにすることに、恐怖感とともに強い嫌悪を抱く」などと、かなり感情的な文言で非難している。

 大学側に対しても、「誤った情報を元に警察が捜査を開始した現状を放置することは、医局を混乱に陥れる者に加担することと同じであり、大学の自治と自浄能力を否定することにつながる」と批判。その上で「事件の発端となった人間の厳しい責任の追及をお願いしたい」と、通報者の糾弾を要請している。

 しかし、同大コンプライアンス(法令順守)推進規程は、内部通報者について「いかなる不利益な取り扱いも被ることがないよう、必要な措置を講じる」ことを定めている。

 医局員の一人は文書を提出したことを認め「通報者の責任追及の部分は反省している。通報内容が事実と異なる部分が多く、若い医局員を守るために、事実を明らかにしてほしいという趣旨で作成した」と話している。

 一方、同大総務・財務課は、申し入れ書について「通報者制度の趣旨にそぐわない内容で、取り上げるに値せず、特に対応はしなかった。コンプライアンス制度に対する理解が、浸透していなかった面があったのかもしれない」としている。

大学側調査に市議会から批判噴出

 横浜市大の嶋田医学部長による金銭授受問題で、市は二十八日の市議会常任委員会で、同大コンプライアンス推進委員会がまとめた調査報告書について説明した。委員からは、報告書のあいまいな内容や、調査の遅れを問題視する声が続出した。

 報告書は、嶋田学部長が博士号取得の謝礼として、医局員から現金を受け取った事実そのものを認定しただけで、金額や期間などについては、全く明らかにしていない。

 委員の一人は「報告書はあまりにも内容に踏み込んでおらず、市民にも理解されないのでは」と痛烈に批判。市側は「市民の理解を得にくいのは分かる。ご意見は重く受け止めたい」と答えるのが精いっぱいだった。

 別の委員は、昨年十一月の通報から報告書公表まで四カ月もかかった点について、時間がかかりすぎていると指摘した。

 これに対し市側は、昨年十二月の時点で実質的調査が、ほぼ終了していたことを明かし「その後、コンプライアンス推進委員を代える作業でズルズル遅れた。手をこまねいていたわけではない」と釈明した。

 このほか、市側は質疑の中で「類似のことが、かなり多くの先生についてあるのでは、という疑いが生じており、全体を調査しないと適切な処置が取れない」と答弁。医学部内の他の多くの教員にも、嶋田学部長と同様に現金を受け取った疑いがあるという認識を示した。

  (中山高志)

 

この記事を印刷する