政府の道州制ビジョン懇談会が道州制の導入に向け、先ごろまとめた中間報告を読んでいて、十五年ほど前の取材経験を思い出した。
岡山県北のある町が、「木の橋」を造った。木材産地をPRする狙いで、長さ二十メートルほど。車も通れる。しかし、山あいの県道と集落の生活道をつなぐ橋で交通量も少なく、いかにも目立たない。担当者に聞くと、建設可能な場所がそこしかなかったのだという。
木のPRも建設目的のうちだから市街地の目立つ所の方がいい。直接当時の建設省に尋ねると、法律に基づく橋の基準があり、車を通す木製の橋をそうした場所に造ることはできないと、にべもない返事だった。
今回あらためて国土交通省に尋ねた。当時も今も木製だからダメなのではない。安全が保てるならOKとのこと。当時と分権意識の高まった現在では言い方が全然違い、地域事情への配慮がみえた。現に車が通る木製橋は全国で増えている。
分権は進みつつあるが、まだ途上であることも間違いない。道州制の中間報告は、画一化を招き国の活力を奪う中央集権を地域が力を発揮できる分権体制に改めることは歴史の必然と説く。
分権疲れの声があり、道州制への機運もまだ十分ではない。豊かな分権社会のありようを考えてみる時であろう。