岡山市のJR岡山駅ホームで25日、岡山県職員假谷(かりや)国明さん(38)=倉敷市笹沖=が線路に突き落とされ死亡した事件で、逮捕された大阪府大東市の少年(18)が岡山西署の調べに、列車進入に合わせて假谷さんに近付き、「両手でひと押しした」と供述していることが、27日、分かった。
同署は同日、殺人容疑で少年を送検。少年が明確な殺意を持ち、列車到着の瞬間を見計らって犯行に及んだのではないかとみて、JR岡山支社から任意提出を受けた構内の防犯カメラの映像解析などを急ぐ。
調べや目撃情報によると、ホームで假谷さんは、岡山着の普通列車(4両)の最後尾が停車する付近で、ほぼ2列に並ぶ利用客約20人の最前列に立っていた。少年は列車の進入直前、假谷さんの左後方から小走りに近付いて背中を無言で突き飛ばしたとされる。
父親(56)の説明では、少年は小中学校でいじめを受けたため、自宅から離れた府立高校に進学。大学進学を希望したが、父親が「お金がないから行かせられない」と告げると「1、2年働いてお金をためる」と答えた。
少年は1月に郵便局でアルバイトを始めたが、給料が少ないなどとして別の仕事を探そうとし、事件前日の24日も大阪市内の職業安定所を訪ねていたという。
調べに対し少年は、25日の家出の動機に、大学進学を経済的な理由であきらめさせられたことを挙げており、同署は進路をめぐる葛藤(かっとう)が犯行の背景にあったとみて事情を聴く。
事件現場のホーム、花手向け涙 手合わせる人も
假谷国明さんが線路に突き落とされ死亡したJR岡山駅2番ホームでは27日、突然の死を悼む人々が花束などを供え、冥福を祈った。
現場そばの鉄柱には花束がそっと手向けられ、親族の男性が涙ぐみながら缶入りのお茶を供えていたほか、しゃがんで手を合わせる駅利用客もいた。
旅行中の大阪府高石市、アルバイト嶋田茂さん(40)は「假谷さんと同世代でもあり、花だけでもささげたくて来た。事件を教訓に、社会全体が命の大切さをあらためて考えてほしい」と沈痛な面持ちで話していた。
假谷さんの通夜は同日夜、自宅に近い倉敷市内の斎場で営まれ、親族や岡山県庁の同僚ら数百人が参列した。会場には家族写真や趣味だった野球のグラブやユニホームが飾られ、遺影には笑顔の假谷さんが写っていたという。幼い子どもたちが泣きじゃくり、涙を手でぬぐう姿もあった。