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円高の輸出への影響

2008年03月29日

 今回の円高の特徴は、昨年7月の円安のピークに比べ約20%もの円高となり短期間に大幅に上昇したこと、米国の景気が鈍化し、サブプライムローン問題の影響が世界経済に広がり始めた時期に起こったことである。

 わが国の対米輸出は昨年9月から前年比マイナスになり、わが国総輸出の実質伸び率は、筆者の試算では、昨年10月以降、毎月3%程度低下しており、今後、1ドル=100円で推移した場合、3月には円高によって円建て輸出額が7%程度縮小し、輸出は4年4カ月ぶりにマイナスに転化するものと予想される。これまで6年にわたりわが国の経済成長を支えてきた輸出が日本経済にマイナスの影響を与える恐れがある。

 しかしながら、1ドル=80円を切った1995年当時と輸出環境は大きく変わり、全輸出額に占める米国向けの割合は27%であったものが、現在は19%と大幅に縮小した。代わってアジア向けが47%、そしてロシア・東欧、中東・アフリカ、中南米、大洋州を合わせた地域向けが16%とほぼ米国向けに匹敵し、わが国の輸出を牽引(けんいん)している。前者は中国、インド、ベトナムといった人口の多い国の経済が堅調であること、後者は鉱物資源などが豊富で、価格も高止まり状態にあり、高成長を続けていることから、わが国の輸出は大幅には落ち込まないものと予想される。

 さらに、輸出企業の為替対策として、為替予約や輸出価格・円建て比率の引き上げ、ドル建ての債権・債務を相殺する為替マリー、そして現地生産の拡大と世界拠点の活用で、競争力のある製品を持つ大手企業は為替対応力を強めており、円高が短期であれば、企業業績への大きな影響は少ないと考えられる。ただしその前提として、世界主要国の財政金融政策と政策協調によって、サブプライムローン問題の影響を最小限にとどめることが必要である。(創)

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