ホーム > きょうの時鐘


2008年3月29日

 米国の俳優リチャード・ウィドマーク氏(93)が亡くなった。と言っても分かる人は少ないだろう

ギャングやガンマン役で知られ、手塚治虫漫画の悪役のモデルになったと言えば納得するファンもいよう。味のある悪役がいてこそ映画は生きる。正義が一層鮮明になる。どんな世界にも悪役や敵役は必要だと思わせる訃報でもあった

で、わが政界に存在感ある悪役はいるか。かつてそれに近かった小沢民主党代表の悪役度も混迷気味だ。日銀総裁人事拒否やガソリン値下げに執念を燃やす姿は、光の当たる主人公になりたがっている気配がにじみ過ぎている

福田首相は「いい人」にしかなれないキャラクターだ。その首相の決断にそっぽを向く与党の面々も表立って悪役になる者はいない。昔の東映時代劇の進藤英太郎や山形勲のようにドラマ展開に欠かせない名悪役を望んでも無理な時代か

以前の悪役はパターン化していた。今は正義づらをした者ほど画一的な姿形をしていて、いいモン悪モンの区別がつきにくい。だが「いい人」ばかりでなぜドタバタ劇しか作れないのだろう。観客の「入場料返せ」の怒声が聞こえないのか。


ホームへ