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〈北海道医療ルポ〉地元医師会が病院の夜間救急を支援
北見医師会、美唄市医師会など、各地で増加
2008.3.28
3月末で内科医師6人が一斉退職する北見赤十字病院(北海道北見市)の夜間急病センターに、北見医師会(古屋聖兒会長)が3月から診療支援に入った。さらに、美唄市では、市立美唄病院の休日・夜間救急を支援するために、美唄市医師会(志智重之会長)の会員が、4月から当直支援に入ることになっている。地域医療の崩壊が進む北海道では、地方の中核病院などが医師不足で医療機能を果たせなくなるケースが続出し、地元医師会が診療支援に入るケースが増えだしている。
● 内科医師一斉退職で医師会に支援要請
今年1月、北海道北見市の北見赤十字病院(680床)の内科医師6人全員が、3月末で一斉退職することが判明した。
同病院は、オホーツク圏域(3次医療圏)の地方センター病院(1991年指定)と救命救急センターの指定(92年)を受ける同圏域の基幹病院。97年には北見市からの委託で夜間急病センターを院内に設置。1〜3次の救急患者を受け入れていた。
しかし、内科医師の全員退職が判明して以降、同病院では1月末で内科の新患外来を中止。通院患者も他医療機関へ紹介。内科入院患者についても、3月末までに全員他の医療機関に転院させるなどの措置を取らざるを得なくなり、救急医療体制や夜間急病センターの運営に支障が出る事態になった。
そのため同病院では、地元の北見医師会に救急医療体制確保のために支援を要請。同医師会では、夜間急病センターの診療支援を3月から行うことを決めた。支援に入ったのは、同会の40歳代から70歳代の開業医師12人。派遣期間は3カ月間を予定し、平日の午後7時〜10時まで交替で診療に当たっている。
夜間急病センターへの医師派遣について古屋会長は、「病院の戦力になるためではない。市民の安心・安全を守るためだ」と強調。派遣期間を限定したのは、「支援に入る医師は、自らの診療所での診療を終えた後に入ることになる。3カ月間としたのは、疲労を考えたから。無期限はありえない」とし、支援に入るには開業リスクをかかえる「医師会の医師が元気なことが前提」だとしている。
さらにこれとは別に、北見市内の相内地区にある市立診療所の医師が退職・不在になったことから、同医師会では市の要請を受けて、今年3月までの6カ月間という約束で毎週水・木曜日の午後に会員医師5人が交替で勤務している。しかし、医師確保のめどが立っていないために、期間延長の可能性もある状況だ。
古屋会長は、「地域医療は、病院だけではなく診療所の医師も担っている。期間延長が繰り返されれば、診療所の医師も疲弊してとも倒れになる危険性もある。医師の確保は、病院、市、道、そして国が責任を持つべきだ」と強い口調で指摘している。
● 美唄市医師会も市立病院の当直支援へ
美唄市医師会も4月から、市立美唄病院の当直支援を始める。同病院は昨年6月に同市内の美唄労災病院と統合して市立病院を存続させることでいったんは合意していた。しかし、合意後に労災病院の医師の退職が続いたために、両病院の医師41人を見込んで策定された経営計画が大きく揺らぎ、美唄市は9月になって統合を断念。労災病院も、岩見沢労災病院の分院として脊損医療に特化して医療機能が限定されることになったため、労災と市立の2病院が中心となって担っていた同市の救急医療体制が危機に陥る状況となった。
こうした事態に、同医師会と市は、夜間急病センターの設置を検討したが、市の財政難のため断念。代わりに、市立美唄病院を窓口とした救急医療体制を構築することにして、市立病院の医師6人と、医師会会員(病院・診療所)5〜6人、労災病院の医師3〜4人、大学病院からの当直支援医師などが、土・日・祝日と平日夜間の救急体制を組むことで合意した。
同医師会の志智会長は、「どこにもしわ寄せが行かないようにということで話がまとまった。市立病院の施設・医療機器、コメディカルを流用することもでき、新たな費用負担を避けられる」と、オール美唄の体制が組めた背景を説明。4月から交替で当直に当たる医師は20人程度になる見込みで、当直医師は夜間救急も担当することにしている。
今月開催された北海道医師会代議員会では、地元医師会が救急医療体制確保のために中核病院に支援に入るケースが、北見市、美唄市以外にも複数あることが報告されており、今後も増える可能性が高い状況だ。
北海道医師会の宮本慎一副会長は「これまでも自治体の夜間急病センターなどは医師会が診療を担ってきた」と指摘した上で、「地方の中核病院の医師不足による救急医療体制支援は、患者・住民を守るためである。開業医が(診療後も)協力しないと地域医療が成り立たない状況」と述べ、国や道の医師確保対策の強化が必要だと指摘している。
写真=北見赤十字病院
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