未承認薬、4月から保険併用可

 厚生労働省は4月に「高度医療評価制度」を創設し、薬事法の承認などが得られていない医薬品や医療機器でも一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能にする。実施できる医療機関を特定機能病院などに限定し、厚労省の「臨床研究の倫理指針」を順守できる体制を求めることなどで有効性や安全性を確保する方針。厚労省は「薬事法の承認に至るまでの過程として、限定された医療機関でデータ収集などを目的に行っていただく」と説明している。

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 厚労省は3月26日の中央社会保険医療協議会総会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)に「高度医療評価制度」の創設を提案し、了承された。

 薬事法の承認などが得られていない医薬品や医療機器でも、厚労省医政局内に設置する「高度医療評価会議」で安全性や有効性などが認められれば保険診療との併用が可能になる。

 現在の制度では、治療の一部に未承認薬などを使うと、保険が適用される部分も含めて原則として患者の自己負担となる(混合診療の禁止)。例外的に保険診療との併用が認められる場合(保険外併用療養費)は現在、「評価療養」と「選定療養」の2つがある。

 このうち、「選定療養」は保険適用を前提にしない差額ベッド料や予約診療など10種類がある。
 「評価療養」はいずれ保険適用になるもので、(1)先進医療(従来の高度先進医療を含む)、(2)医薬品の治験に関する診療、(3)医療機器の治験に関する治療、(4)薬事法承認後で保険収載前の医薬品、(5)薬事法承認後で保険収載前の医療機器、(6)適応外の医薬品――の6種類があり、「高度医療評価制度」は先進医療に含まれる。

 質疑で、中川俊男委員(日本医師会常任理事)が「高度医療評価制度」の健康保険法上の位置付けについて質問。「保険外併用療養費の評価療養との違いをどのように考えたらいいのか。いわゆる混合診療と考えればいいのか」
 これに対し、厚労省保険局医療課の宇都宮啓企画官は「高度医療評価会議を通すプロセスは先進医療の1つとして考えている。特別に外に出た別の枠組みではない」と答え、保険診療と自由診療との併用(混合診療)を禁止する原則を崩すものではないことを強調している。

 混合診療をめぐっては、昨年11月に東京地裁が「混合診療を禁止する明文規定はない」とする判決を出した。今年2月には政府の規制改革会議が見解を発表。「ある程度技術が普及した後に保険診療が認められることが通常であり、患者の個別の特性に応じた治療法をタイムリーに選択できる権利を国民から奪うべきではない。混合診療を原則禁止としている制度そのものについて問題意識を抱いている」と主張している。

 今回の「高度医療評価制度」の創設は、がんの患者団体や政府の規制改革会議など混合診療の全面解禁を求める声に配慮した措置で、宇都宮企画官は次のように説明した。
 「現在の先進医療の制度では、薬事法の承認を受けたものでなければ対象にならなかった。つまり、薬事法で安全性、有効性が担保されたものだけが対象だったが、今回は薬事法未承認でも先進医療の対象になる」

■ 薬事法の承認につなげることが原則
 
厚労省は高度医療を実施する医療機関の要件として、大学病院などの高度な医療を提供する病院に限定し、臨床研究の倫理指針を守ることができる体制や医薬品の管理体制の整備など多くの要件を示し、安全性や有効性に配慮している。

 質疑で、大島伸一専門委員(国立長寿医療センター総長)は倫理指針などに違反した場合について質問。「ルールや規範の裏にはペナルティーがあって当然。新しい医療技術の開発はルールを重視してやらなければいけない。これ(高度医療評価制度)をやらせたら、一体どういうことになるのだろうか」

 これに対し、医政局研究開発振興課の新木一弘課長は「臨床研究に関する倫理指針」の存在を指摘し、「ガイドラインなので直接的なペナルティーはないが、倫理指針に基づいて行われなかった場合は厚生労働科学研究費の上での対応、場合によっては医師法や医療法などの規定が関係する」と回答するにとどめた。
 新木課長はまた、「倫理指針の実効性をどう確保すべきかを議題にして厚生科学審議会の下に専門委員会を設けて検討している。夏までには結論をまとめていただきたいと思っている。ご指摘の点も含めてさらに検討を進めていきたい」と理解を求めた。

 一方、中川俊男委員(日本医師会常任理事)は医政局の「高度医療評価会議」と薬事法との関係について質問。「薬事法で未承認のものを認めると、メーカー側としては高度医療評価会議で認められれば薬事法に申請するインセンティブが働かない危険性がある。この点をどのようにお考えか」と尋ねた。
 これに対し、新木課長は「原則は薬事法の承認を受けて広く使えるようにしてほしい。(高度医療評価制度は)あくまでも薬事法の承認に至るまでの過程として、限定された医療機関でデータ収集などを目的に行っていただく」と説明した。


更新:2008/03/28 17:11     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。