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【社説】

高齢者医療制度 見直しをためらうな

2008年3月29日

 「後期高齢者医療制度」が四月から始まるが、対象となる七十五歳以上の高齢者には内容が浸透していない。政府には周知徹底と同時に、問題点の指摘に耳を傾け、常に改善する姿勢を求めたい。

 高齢者医療制度は二年前に成立した医療制度改革関連法の具体化の一つで、その後各自治体は準備を進めてきた。スタート直前になり地方議会で相次いで見直しを求める意見書が採択された。新制度の内容がわかりにくく、それが最近ようやく知られてきて高齢者の不安が高まったことを受けてのものだ。

 昨秋に保険料徴収の一部先送りが決まったこともあり、一部自治体ではシステムの変更が遅れ、保険料の年金からの天引きが間に合わないなど混乱も見られる。

 新制度は国主導の現行の老人保健制度と違い、都道府県単位で運営され医療費が高い都道府県ほど保険料は高くなる。高い都道府県が予防に力を入れ、医療費の伸びを抑制することが政府の狙いだ。

 高齢者は従来の国民健康保険に代わり新制度でも保険料を払う。医療費の一割で、収入が多いと負担増、低いと負担減になる。

 問題の一つは、子どもの扶養家族の約二百万人の高齢者も七十五歳になると保険料を求められることだ。年齢の違う高齢者の夫妻が別々の制度に加入し、一方だけが保険料を払う事態が生じる。

 保険料の「激変緩和」でことし十月までの半年間は負担はなく、その後も一年半は大幅に軽減される。こうした特例がなくなったあと保険料を負担できない高齢者が受診を控えることも懸念される。手遅れになるような事態があってはならない。きめ細かい負担方法の検討が必要だろう。

 保険料の負担割合は若年人口の比率の低下に応じて一割を超えて上がる仕組みが導入されている。

 現役世代とのバランスをとるとはいえ、高齢者にとって今後、保険料がどこまで上がるかは大きな不安だ。将来、負担割合に上限を設けることなどを考えるべきだ。

 新制度に問題が多いため、野党四党は今国会に廃止法案を提出している。とはいえ現行の医療制度には無駄が多く、このままでいいとも思えない。野党もぜひ改革への提言をしてもらいたい。

 高齢者の増加に伴い、医療費の増大は今後も避けられない。無駄を省きつつ、不足する財源をどう賄うか。政府の歳出全体の中での優先順位の議論に与野党、国民が真剣に取り組むときである。

 

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