子どもたちに農業への理解を深めてもらおうと、全国農業協同組合中央会(JA全中)が「バケツ稲づくりセット」の配布を始めて今年で二十年になる。
種もみを発芽させ、バケツで栽培する。太陽を浴び成長していく様子が観察できる。水加減の調整や草取りを怠れば枯れてしまう。刈り取った稲は天日干しし、脱穀・精米を行い、ご飯やおにぎりにして食べる。
上手に育てればバケツ三個分で茶わん一杯くらいの米が収穫できるという。ささやかな農業体験だが、天候不順が続くと、米作りも難しくなる。実際の体験から得られた知識は貴重だ。
栽培のコンテストに応募した子どもらの報告が面白い。バケツに植える稲株の数を変えて収穫量の変化を探ったり、日なたと日陰で成長の違いを調べた“豆博士”もいる。
ある小学三年生はスズメや虫が稲穂を食べに来るのに驚き、稲を育てる苦労が体験できた。「一つぶ一つぶ大切にしなさい」と話す両親の言葉がよく分かった、と記している。
栽培を通して理科や社会科の知識も得られ総合学習として取り組む学校も多く、食育の教材としても注目されている。小さな「バケツの田んぼ」から子どもたちが学ぶものは大きい。セットの申し込みは、JA岡山中央会へ、四月六日まで。なくなり次第締め切る。