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脳梗塞:初期治療の運任せ改善 特効薬「t-PA」活用 都、救急体制見直し /東京

 ◇遠くても専門病院を

 脳卒中の7割を占める脳梗塞(こうそく)で、発症後速やかに専門治療を受けて後遺症を少しでも減らそうと、都は4月から救急搬送、患者受け入れ体制見直しの検討を始める。05年に脳梗塞への適用が解禁された特効薬「t-PA」を活用し、「運任せ」ともいわれる初期治療の改善につなげる狙いがある。東京消防庁や医師会、病院の関係者らと「脳卒中医療連携推進協議会(仮称)」を設け、来年度中に都全域での「脳卒中治療ネットワーク」構築に向けた方向性を出す。【酒井祥宏】

 都内では03年から13の保健医療圏で保健所と消防、病院が糖尿病や脳卒中、急性心筋梗塞など疾病別に医療連携を進めてきた。しかし従来の脳梗塞患者の救急搬送、初期治療では、t-PA治療の体制を整えているかどうかにかかわらず、最寄りの神経内科や脳外科などへ搬送されるケースが多かった。「救急患者を受け入れ診療報酬を稼ぎたい」という病院側が積極的に情報開示せず、離れた専門病院より最寄りの病院を優先する総務省消防庁の救急搬送基準が背景にあるためという。

 「後遺症の有無は運任せだったかもしれない」。多摩立川保健所管内の北多摩西部保健医療圏(立川市など6市)で、05年から保健所や消防との協力体制を検討してきた共済立川病院の太田晃一神経内科部長が指摘する。

 北多摩西部では昨年8月、t-PA治療体制が整った共済立川病院と災害医療センター(立川市)、東大和病院(東大和市)の投与可能日カレンダーや、脳卒中の症状の判断基準を消防署4署に配布。消防側は救急車にカレンダーを載せ、病院選択の一つとして活用し始めた。その結果、救急車による3病院への脳梗塞患者の搬送は40%から65%に高まった。

 太田部長とともに連携のまとめ役だった災害医療センターの高里良男統括診療部長によると、運用開始後、センターのt-PA投与数は1カ月3件程度から6件程度に倍増した。右半身マヒで失語状態となり、発症から1時間半で搬送された60代の男性の場合、血液など20項目以上を検査し、2時間40分後にt-PAを投与した。後遺症もなく2週間後に退院した。

 予防からリハビリまで「質の医療」を提唱する高里部長は成果として▽救急隊のカレンダー活用で搬送時間が短くなった▽3病院への搬送を依頼するかかりつけ医が増えた--などを挙げる。都の担当者は北多摩西部の取り組みを「先駆的な連携」と評価し、「都全体で受け入れとともに、回復期までの体制を整備したい」と話している

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 ■ことば

 ◇t-PA

 血管に詰まった血栓(血の塊)を溶かす血栓溶解薬の一つ。05年10月に脳梗塞への適用が認可され、投与された患者の約4割弱が回復している。発症から3時間以内に投与する必要があり、出血の副作用もあることから、日本脳卒中学会は投与可能な病院のガイドラインとして(1)CTまたはMRIが24時間実施可能(2)知識と経験がある医師が複数いる(3)医師が学会の講習会を受講している--などを定めた。

〔都内版〕

毎日新聞 2008年3月28日 地方版

 

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