【ジャカルタ井田純】オーストラリアのラッド首相は27日、米国、欧州、中国歴訪に向け出発した。昨年12月の就任後、初の本格的な外遊だが、中国通として知られる首相は中国に4日間滞在する一方、日本訪問を見送った。最近の日豪関係は調査捕鯨を巡る対立など否定的要素が目立つだけに、「日本軽視の表れ」とする見方も出るなど、論議を呼んでいる。
4月12日まで続く外遊は「メガ・ツアー」と報じられ、最初の米国ではブッシュ大統領と会談。ベルギー、英国などを経て中国訪問で締めくくる。首相はインドネシアなど近隣諸国を訪れているが、主要国歴訪は初めて。
労働党政権を率いるラッド首相は中国語が堪能で、外交官として北京駐在を経験した。また、野党時代にラッド氏や今の閣僚ら労働党幹部が、海外渡航費用を中国企業にたびたび負担させていた事実が最近になって発覚。政権と中国との関係の深さが改めて浮き彫りになっていた。
野党・自由党は「中国に4日間も滞在するのに、最大の輸出相手国の日本には1時間割くこともできないのか」と批判。地元紙では、ラッド首相の「中国傾斜ぶり」を皮肉り、チベット暴動でも「中国に厳しい態度を取らないのでは」とする論評が出ている。
反捕鯨政策の強化を公約に掲げ昨年11月の総選挙で勝利したラッド政権は巡視船による日本の調査捕鯨監視を実施。世論を含め日豪関係がぎくしゃくするきっかけとなった。外交筋は「ラッド政権は捕鯨問題の強硬姿勢が日本側の反発を招き、逆効果になるという認識がなかった」と分析。「日本とばし」は豪世論と対日関係のバランス上、捕鯨問題の協議を先送りする狙いもあるとみられている。
毎日新聞 2008年3月28日 東京朝刊