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集団自決訴訟:大江さんらへの請求を棄却 大阪地裁

原告敗訴の判決に喜ぶ大江健三郎氏の支援者ら=大阪市北区で2008年3月28日午前10時5分、貝塚太一撮影
原告敗訴の判決に喜ぶ大江健三郎氏の支援者ら=大阪市北区で2008年3月28日午前10時5分、貝塚太一撮影
車から降り、大阪地裁に入る大江健三郎氏=大阪市北区で2008年3月28日午前9時半、貝塚太一撮影
車から降り、大阪地裁に入る大江健三郎氏=大阪市北区で2008年3月28日午前9時半、貝塚太一撮影

 ノーベル賞作家・大江健三郎さんの著作「沖縄ノート」などで、第二次世界大戦の沖縄戦で集団自決を命令したとの虚偽の記述をされ名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の戦隊長らが大江さんと出版元の岩波書店に対し、出版差し止めと慰謝料2000万円の支払いを求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。深見敏正裁判長は「隊長の関与は十分に推認される。(記述には)真実と信じるに足る相当な理由がある」と判断。「名誉棄損は成立しない」として、請求を棄却した。

 隊長の自決命令の有無については「認定にはちゅうちょせざるを得ない」と明確な判断は避けたが、当時の状況などから「集団自決には旧日本軍が深くかかわった」とした。

 原告は、沖縄・座間味島にいた海上挺進隊第1戦隊長の梅沢裕さん(91)と、渡嘉敷島の同第3戦隊長だった故赤松嘉次さんの弟秀一さん(75)。沖縄県平和祈念資料館によると、座間味島では171人、渡嘉敷島で329人が集団自決したとされる。

 元隊長らは05年8月、いずれも岩波書店が出版した「沖縄ノート」と故・家永三郎さんの「太平洋戦争」での記述を巡って提訴した。「隊長命令の有無」と「名誉棄損の成否」が争点となった。

 原告側は、研究者や作家の著作、部下の証言を基に「かつて定説だった隊長命令説は事実に基づかない風聞であることが明らかになったのに、両作品は出版を続け、耐え難い精神的苦痛を受けている」と訴えた。

 これに対し、大江さんと岩波書店側は、戦史や新たな証言を根拠に「当時の『軍官民共生共死』の方針のもと、隊長の命令があったことは明らか」とした。さらに「沖縄ノート」では隊長の個人名を記載していないことを挙げ「原告特定の記述はなく、集団自決を命令したとも書いていない」と反論していた。

 昨年3月に公表された06年度の教科書検定では、文部科学省が、訴訟での元隊長らの主張を理由の一つに、集団自決は「日本軍の強制」とする日本史教科書の表記に初めて検定意見を付け、問題となった。【遠藤孝康】

毎日新聞 2008年3月28日 11時14分(最終更新 3月28日 11時15分)

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