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「沖縄ノート」訴訟、元軍人の請求棄却 大阪地裁

2008年03月28日10時47分

 太平洋戦争末期の沖縄戦で、旧日本軍が住民に集団自決を命じたとした岩波新書「沖縄ノート」などの記述で名誉を傷つけられたとして、元戦隊長と遺族がノーベル賞作家の大江健三郎さん(73)と出版元の岩波書店(東京)に出版差し止めなどを求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。深見敏正裁判長は、元戦隊長の命令があったと断定できないとしたものの、「集団自決への旧日本軍の関与がうかがえ、元戦隊長2人の関与を推認できる」として、訴えをすべて退けた。

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大阪地裁に入る赤松秀一さん(左)と梅沢裕さん=28日午前9時40分、大阪市北区で

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大阪地裁に入る大江健三郎さん=28日午前9時31分、大阪市北区で

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傍聴券を求めて並ぶ人たち=28日午前9時47分、大阪地裁で

 原告は、元座間味島戦隊長の梅沢裕さん(91)と元渡嘉敷島戦隊長の故・赤松嘉次さんの弟秀一さん(75)。1945(昭和20)年3月の集団自決で、座間味島で約130人、渡嘉敷島で300人以上の住民が亡くなったとされる。

 大江さんは「沖縄ノート」で、集団自決の証言を集めた文献を引用しながら、両島では軍の命令があったと指摘。元隊長2人の実名を出さずに「この事件の責任者はいまなお、沖縄にむけてなにひとつあがなっていない」などと記した。

 元隊長側は裁判で「住民に集団自決を命じた事実はない」などと「軍命令説」を否定。大江さん側は、地元郷土史や住民の証言が多数あることなどから、「日本軍が『軍官民共生共死』の方針を住民らに担わせ、タテの構造の中で自決を強制したことは明らか」と主張していた。

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