道路を問う
道路建設と巨額財源、そのあるべき姿を考える
トップ > シニア > プレシニア記者がゆく これからの入門ガイド > 記事一覧 > 2008年の記事一覧 > 記事
【プレシニア記者がゆく これからの入門ガイド】銭湯が新鮮(下) 東京の湯巡り“お遍路”2008年3月28日
世田谷区の出版社勤務、中馬幸子さん(50)は最近、会社帰りなどに銭湯に立ち寄るようになった。 きっかけは知人の紹介で「銭湯お遍路」を知ったこと。「それまで銭湯はほとんど入ったことがなく、知らない人との裸の触れ合いが新鮮だった」と魅力を感じた。仕事で忙しい時の中断もあってまだスタンプの数は17個。その中馬さんが「どんな人なのか」と名前を挙げたのが大森甲子夫(きねお)さん。 昨年10月から東京都公衆浴場組合が始めた銭湯お遍路で、わずか4カ月強で352浴場(1冊88カ所のスタンプノート4冊分)を2月に達成。一日平均2・7回ペースで銭湯に入った計算だ。中馬さんは同組合のホームページで、大森さんの名前を知った。 ◇ ◇ 大森さんに会った。大田区萩中で建設業と不動産業を営む一級建築士。今月22日で68歳になったばかり。銭湯お遍路の5冊目のスタンプノートを手にする。 山梨県出身で52年前の昭和31年、中学を卒業して東京に来た。大工見習いとして現場に住み込む生活。「第一京浜で馬が荷車を引いていた時代だった」。仕事が終わるとほこりまみれの体を銭湯で流した。結婚し、自宅に内風呂を持っても銭湯通いの生活を変えなかった。 銭湯お遍路は昨年10月11日から。初日に行きつけの銭湯の「朝風呂」に入った後、午後は仕事先の北区の銭湯、そして自宅近くの銭湯と、3軒入った。仕事用バッグにタオル、スタンプノート、割引の共通入浴券を常に入れている。前から一日2回は入ることが多かったというが、一日3軒は「この際、東京中の銭湯に入ってしまおう」という思いからという。 同じ銭湯に2度入ってもスタンプの数は増えないので、足を運ぶ銭湯は次第に遠くなっていく。最近は新宿区が多い。「ビルの中の銭湯が多く、煙突を目印に、というわけにいかず、なかなか見つけられず苦労したりする」 大森さんは5年前に心筋こうそく、続いて脳こうそくで入院したが、その後の経過が良くほとんど後遺症がないという。「お風呂に入っていればたいがいの病気は良くなる」と言い切る。 スタンプノートには「大正時代から」とか「唐破風の屋根」などの書き込みも。当日に廃業を知って駆けつけた銭湯など、思い出も多い。 一番好きな銭湯は、との問いに「まだ東京の銭湯の4割しか入っていない」と言いながらも「やはり大田区に多い黒湯の銭湯がいい」と近くの銭湯の名をいくつか挙げた。 大森さんの案内でJR蒲田駅に近い「ゆ〜シティー蒲田」(大田区蒲田1の26の16)へ。ビル内のきれいな現代的な銭湯だが、外に黒湯の露天風呂と打たせ湯も。おまけに、銭湯内の階上にカラオケのある飲食できるフロアも。 ビールを飲みながら話が弾み、酔った大森さんが「まだまだ現役ですよ。仕事もほかも…」とにっこり笑った。 (朽木直文) 銭湯お遍路 東京都公衆浴場組合が昨年10月から、銭湯の楽しさを知ってもらおうと始めた。「お遍路巡礼スタンプノート」に、入浴した各銭湯でスタンプを押す。達成者に認定証と記念のバッジ(88浴場達成以上)。同ノート付き小冊子「東京銭湯お遍路マップ」(300円)には昨年8月時点営業の銭湯935軒の所在地の地図と説明も。3月中旬で26浴場達成は800人を超し、88浴場は約110人。(電)03・5687・2641同組合
|