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2008年3月28日

◎コンビニ最大手進出 地産地消で「貢献度」高めよ

 コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパンが、今秋から北陸三県に順 次出店する計画を打ち出した。高密度多店舗出店で、集中的に進出する方針というが、新幹線効果による地域力向上を見通したエリア展開とも言えよう。これを機に、既存のコンビニや大型店も含めて、北陸の豊富な食材を利用した独自企画を競い合い、地産地消による地域貢献度を高めてほしい。

 北陸のコンビニは、各社の出店競争により飽和状態にあるとも言われる。生き残るため に、各社とも、地元の食材や地元好みの味付けを取り入れるなど、地域色を出した取り組みを本格化させている。能登半島地震の被災地を応援する復興キャンペーンを展開するなど、自治体と連携した地域活動に目を向けるところもある。最大手進出により競争激化が必至の状況で、郷土に根ざした店として定着していく意味でも、幅広い貢献策に知恵を絞ってもらいたい。

 国内で約一万二千店舗を展開するセブン―イレブンは、これまで本州では東北の一部や 山陰とともに北陸への出店はなかったが、おでん用に石川産の源助大根を使うなど良質な食材の調達先として密接にかかわってきた。今回は秋をめどに富山、福井で出店し、製造・物流拠点を設ける石川でも、拠点の稼働に合わせ来春にも営業を開始するという。

 全国一律のサービスで店舗を拡大してきたコンビニだが、既存店の売上高の前年割れが 続く状況で、各社とも中高年や高齢者も取り込んだ地域戦略に活路を見い出している。現在では地元の野菜や魚介類を使うのが、むしろ当たり前となり、独自商品が五割を占めるセブン―イレブンも、春なら和歌山では梅、宮崎では新タマネギというように、季節ごとに地域限定の「食育応援弁当」を出すきめ細かさである。

 多彩な食の宝庫である北陸の自治体や生産者、製造業者の側も、コンビニからの注文を 待つだけでなく、大いに地元産を売り込んでもらいたい。石川県の意識調査では、食育に関心は高くとも、それを実践している県民の割合は全国平均以下との結果が出た。北陸の若い世代が地元のオリジナル食品が並ぶコンビニを利用する中から、郷土の食材に目を向けるきっかけも生まれるだろう。

◎取り調べで新規則 恣意的な運用に陥らず

 富山県警の冤罪事件などを受け、警察庁は「取り調べ監督官」を警察本部に配置するな ど、調べが適正に行われているかを調査する手順などを定めた国家公安委員会規則をまとめた。日弁連などが求める全面可視化を牽制する意図もうかがえるが、その是非を判断するうえでも内部のチェック機能がどこまで働くか見極めることも大事である。捜査の信頼性を高めるために恣意的な判断がまかり通らない厳格な運用を心がけてほしい。

 検察に続き、警察庁も新年度から可視化を試行するが、一部にとどめる方針である。取 り調べを録音・録画する全面可視化については、警察内部から「被疑者が自白しなくなる」などの懸念が相次ぎ、取り調べの全過程を対象とする日弁連の主張とは隔たりをみせたままだ。

 冤罪事件の教訓は生かさねばならないが、過剰に反応するあまり、現場が萎縮しても困 る。物証が乏しい事件では、被疑者の供述が真相解明の一番の頼りである。可視化についてはその功罪を慎重に見極める必要があり、試行を重ね、新規則を適切に運用する中から望ましい導入の在り方を考えていきたい。

 新規則では▽容疑者の体への接触▽ことさら不安を覚えさせる言動▽便宜供与や便宜の 約束―などを「監督対象行為」とし、監督官は透視鏡で取調室の様子を確認するほか、「巡察官」として警察署も巡回する。捜査部門以外の監督権限を強化するのが狙いである。気をつけねばならないのは、身内だけの規則というのは都合のよい解釈、判断に流れやすいことだ。運用に疑念が生じれば、可視化の風圧が一気に強まることを警察側は認識する必要がある。

 富山県では今月、強盗致傷罪に問われたロシア人被告に対し、富山地裁が無罪(求刑・ 懲役五年)を言い渡し、「警察官の脅迫的言動や誘導を受けた疑いがある」と供述調書の信用性を疑問視する判決があった。

 実行犯との共謀関係が焦点となった今回のような事件では、犯行に加担した認識の度合 いが問題となり、立証は容易ではない。自白の任意性が争われることが予想されるようなケースでは、証拠価値を担保するために警察側が積極的に録画・録音を検討してよいだろう。


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