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IDEOが教える「イノベーションを生む秘けつ」

インタビュー: 坂和敏(編集部)
文: 坂本和弘
2006年08月07日 08時00分


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 英国のEconomist誌が、「いまやイノベーションは現代のあらゆる経済圏において、もっとも重要な要素とみなされている」と宣言した。

 今でこそ「イノベーション」という言葉は日本にも浸透してきたが、ほんの数年前までは、「イノベーションとはなにか?」と質問をすると、「新たな物を生み出すこと」とか、「古い体質から新しい体質に生まれ変わること」という答えが返ってきていた。単に「技術革新」と訳している辞書もあった。

 これらの答えは間違いではない。だが不完全だ。

 イノベーションという単語は、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペータが、その著書「経済発展の理論」の中で「経済循環の軌道が自発的・飛躍的に変化する現象」という意味で使ったのが最初で、「新しい財貨の生産」「新しい生産方式の導入」「新しい組織の創出」「新しい販売先の開拓」「新しい仕入先の獲得」の5つに分類されている。

 あらゆる新たなものを創出し、常に変化を求めていく。それがイノベーションの根本である。

IDEOが生み出したプロダクツ

 そしてこのイノベーションを生み出す仕組みを提供する企業として注目されているのが、デザインファームのIDEOだ。Apple Computerのマウスや米PalmのPDA「Palm V」、無印良品の壁掛け式CDプレーヤーをデザインした企業として知られ、最近では製品デザインだけでなく組織変革のコンサルティングなども手がけている。

 IDEO創業者のDavid Kelley氏の弟で、同社のジェネラルマネージャーを務めるThomas A. Kelley(トム・ケリー)氏が書いた「発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法」は国内でも累計発行部数が2万3000部と好調な売れ行きだ。6月には新刊「イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材」も発売された。

 カリフォルニア大学でビジネスを学び、MBA(経営学修士号)を取得した彼は、マネージメントコンサルティング会社で勤務した後、IDEOに加わった。同社では主にビジネス開発、マーケティング、人事などの業務を担当している。

 IDEOで数々の実績を積み上げてきたKelley氏に、イノベーションを起こすための秘けつについて話を聞いた。

--25年前から、毎年欠かさず日本を訪問しているとうかがっています。この10年間で日本はどのように変わったと思いますか?

トム・ケリー氏

 ビジネス環境に関して言えば、この10年は非常に大変な時期でしたね。最近になって、ようやくどん底の状況は抜けられたかな、という気はしています。

--景気が上向いてきたとは言え、多くの企業は製品やサービスのコモディティ化を避けるべく、独自の強みを模索しているのが現状です。

 ここ数年、多くの日本企業が当社の力を求めるようになってきました。具体名は出せませんが、現在もいくつかの日本企業とプロジェクトを進めています。これは、国内外の手ごわい競争相手に囲まれた企業が、「イノベーションなくして企業の発展はない」と危機感を募らせていることの証明かもしれません。

--製品のデザインだけでなく、組織改革などのコンサルティングも数多く手がけていますね。

 はい。製品に関する依頼を受けた場合はデザイン部門が請け負いますが、依頼が「システムを変えたい」とか「組織を変えたい」といったものの場合は、トランスフォーメーションと呼ばれる専門の部署が担当します。

--デザインファームが組織のコンサルティングまでを手がけるというのは少々不思議な感じもしますが、初めてプロダクトデザイン以外の仕事を手がけたのはいつですか。

 当社にプロダクトデザイン以外の依頼をしてきたのは、松下電器産業が最初でしたね。1990年代のことです。

 当時、松下電器は、当社に3人のデザイナーを派遣しました。そのうちの1人はコーヒーメーカーのデザインを学ぶためにサンフランシスコに、もう1人は掃除機のデザインのためにロンドンに、残る1人にはスチームアイロンのデザインを学ぶためカリフォルニアに行きました。

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