見知らぬ人を狙った凶行が、また繰り返された。２５日深夜、ＪＲ岡山駅ホームで起きた突き落とし事件。岡山県職員、假谷（かりや）国明さん（３８）＝倉敷市笹沖＝は残業を終えて帰宅中、惨劇に遭った。「誰でもよかった」と無差別な犯行を供述する少年（１８）。突然の悲報に家族、同僚らは深い悲しみと激しい憤りに包まれた。

　「腰が痛い、腰が痛い」。山陽線２番ホームと列車のすき間で、うめくように声を絞り出す假谷さん。「早く助けてあげて」「おまえが突き落としたんだろう」。駅構内に悲鳴と怒声が飛び交う中、帰宅途中の会社員らは不安げに救出作業を見守った。

　岡山市消防局に１１９番が入ったのは、事件発生直後の２５日午後１１時１１分。間もなく救急車やパトカーが到着、救急隊員が１両目と２両目の連結部分の下の線路に横たわる假谷さんを見つけた。

　目撃者らによると、少年はホームの売店前の最前列にいた假谷さんに小走りに近づき、後ろから両手で左肩辺りを突き飛ばしたという。５０代男性は「列車が入ってくる直前に男性が線路に落ちるのを見た」。

　犯行後、少年は現場を離れたが、再び無言で舞い戻り、周囲から「おまえがやったんだろう」と怒鳴られても無反応。突然の凶行に泣き崩れる女性のそばを、駆けつけた岡山県警鉄道警察隊員に連行されていった。

　１１０番した６０代男性は「少年は無表情で不気味だった。何をするか分からないという恐怖感に襲われ、震えが止まらなかった」。岡山市の会社員男性（６５）は「茨城県で無差別に８人が刺された事件から間がないのに…。駅では恐ろしい事件ばかり起きる」と不安そうに話した。

　假谷さんは異動の引き継ぎのため、午後１０時まで残業していた。現場に駆けつけた駅員男性は「声を掛けると、うっすらと目を開けて反応していた」というが、搬送された病院で約５時間後に息を引き取った。

　２６日、現場近くには白い花束が手向けられた。