日本小説にはまる韓国人が急増
日本の小説の人気が急上昇している。
国内の文学全体を揺るがすという指摘も出ている。 日本小説の爆発的人気は、国内出版市場の地図を書き換えており、韓国の作家にもこれまで多くの影響を及ぼした。 明らかなのは、韓国文学は沈滞から抜け出せずにいる一方、日本文学は上昇の勢いに乗っているという点だ。
日本小説は1960年代にも読まれていた。 ハングル世代に日本の小説を初めて伝えた主人公は『氷点』だった。70年代は400万部販売神話を産んだ山岡荘八『大望』の時代であった。 転換点は89年だ。 その年、文学思想社が村上春樹の87年作『ノルウェイの森』を『喪失の時代』というタイトルで出版、韓国で日本の小説の位相が急変する。時々話題作を産んだだけの日本の小説が、常時ベストセラー量産体制に突入する。 村上春樹、村上龍、吉本ばなな、江國香織らが主要登場人物。 出版初年度30万部を突破した『喪失の時代』は毎年3万部程度売れている。 今年、教保(キョボ)文庫6月第3週小説販売ランキング28位だ。 16年目でもランクインしている。 教保(キョボ)文庫側は「今年初めて小説ベストセラー50位で日本の小説が韓国の小説を追い抜いた」と説明する。 最も明確な傾向といえば物量攻勢だ。 「大空襲」と言われるほど日本の小説が押し寄せてきた。 芥川、直木、文藝賞など日本の文学賞受賞作、または受賞作家の作品は例外なく出版されている。 これにより99年、219作品が出版された日本文学は、昨年364作に急増した(韓国出版研究所ペク・ウォングン責任研究員)。 ◇ハルキズム(Harukism) 96年に翻訳出版された村上春樹の登壇作(79年)『風の歌を聴け』の中では、「存在理由」でなく「レゾンデートル(raison d’tre)」と書いている。 終始、傾いた視線からは虚無の情緒が噛み砕かれてささいなことが羅列されていてもささいには見られない。 これが村上春樹の修辞学なのだ。 この慣れない感受性にファンは熱狂し「ハルキズム」という言葉を作って崇拝した。 最近では彼の作品をもとにファンが話を被せていく「リミックス小説」が相次いで出版されている。 現在、韓国最高の人気作家、江國香織。 「女ハルキ」という別名のように彼女の作品は村上春樹のスタイルによく似ている。 『冷静と情熱のあいだ』がアルノ川の悠々としたイタリアのフィレンツェを背景に展開するのは、ドイツハンブルグ空港に着陸したボーイング747機の機内にビートルズの『ノルウェイの森』が流れて始まる村上春樹の『喪失の時代』を連想させる。 問題は読者ばかりハルキズムに熱狂しているのではないという事実だ。 村上春樹は現在、国内作家に最も大きい影響を及ぼしている作家だ。 評論家チャン・ソクジュ氏は月刊「文学思想」の4月号で「(ハルキ族の特徴を)チャン・ジョンイル、ユン・デニョン、ペ・スア、チョ・キョンラン、ク・ヒョソらに見ることができる」と書いた。 本当はもっと多い。 作家パク・ミンギュや最近小説を発表した歌手のイ・ジョックも村上春樹をよく読んでいるとためらいもなく話す。 ある評論家は「作家の何人かには盗作の疑いもみられる」と話すほどだ。 ◇文学、韓流はない 今年初めになって日本市場に参戦したR出版社関係者の話。 「日本で新鋭作家も賞さえ取れば韓国の出版社が5、6社が直ちに獲得に乗り出す」。 文学思想社が優先権を行使してきた村上春樹の版権が最近手放されたという噂が飛ぶや韓国の出版社では一斉に村上春樹に接触する騒動もあった。 一方、日本に渡っていった韓国小説はわずかだ。 韓国では出版禁止となった『楽しいサラ』(馬光洙)が90年代初め、日本でベストセラーにランク入りしたのが唯一だ。 1970年以後、韓国文学翻訳院、大山文化財団などの支援で日本で出版された韓国文学は98作品にすぎない(大山文化財団クァク・ヒョファンチーム長)。 どうしてそうなのだろうか。 作家コン・ジミョン氏の解説が興味深い。 彼は「スタイルうんぬん言っても結局売れるのは恋愛小説だ」と断言する。 これは事実だ。いろいろな評論家の指摘のように日本の小説の関心事はやはり恋愛談だ。 20代女性に集中する国内の読者層を考えれば日本の小説の人気は充分な理由がある。 コン・ジミョン氏は「問題は韓国の作家が恋愛小説を書いても評壇の反応が冷たいというところにある」と主張する。 文壇厳肅主義で、韓国の作家は自由でないということだ。 したがって読者の離脱は自然なことで、しばらくはそれが続くだろうと分析している。 ソン・ミンホ記者 <ploveson@joongang.co.kr> 2005.07.05 12:38:21 |
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