勤務医の負担軽減、調査方法は?

 厚生労働省は3月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)診療報酬改定結果検証部会(部会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)に対し、2008年度診療報酬改定の影響を調べる必要があると判断した11項目(案)を示した。調査項目に挙がった「勤務医の負担軽減」については委員からさまざまな意見があり、遠藤部会長は「改定が病院の収支に与えた影響と、それが勤務医の軽減につながっているかが非常に難しい。もう少し検討が必要だ」とまとめた。(新井裕充)

【関連記事】
1,500億円、勤務医対策は十分か
診療所の再診料引き下げ、見送り
08年改定、残された課題は?

 厚労省が示した項目案は、(1)勤務医の負担軽減、(2)明細書、(3)外来管理加算、(4)亜急性期入院管理料など、(5)回復期リハの成果主義、(6)7対1入院基本料の見直し、(7)歯科の安全対策の加算、(8)がん対策など、(9)後発医薬品の使用促進、(10)後期高齢者医療、(11)ニコチン依存管理料――の11項目。

 遠藤部会長は「具体的な項目と大枠だけの項目があるので、もう少し固める必要がある。本日はフリーディスカッションしたい」と意見を求めた。

 前田雅英委員(首都大学東京法科大学院教授)は「ある程度動かしてみてから検証する価値があるものと、遅くまで引っ張った方が効果を見ることができるものがある」と指摘して、調査を実施する時期を尋ねた。
 厚労省保険局の担当者は「効果が分かるタイミングで調べた方が良い。前回(06年)は秋にスタートしたので、今回も秋になるだろう。項目によって色分けして考えたい」と回答した。

 これに対し、土田武史委員(早稲田大商学部教授)は「明細書の調査は早くてもいいが、外来管理加算は実際に240億円の財源が出るかどうかを調査してほしい」と述べ、外来管理加算は2種類の調査が必要であるとした。
 今回の改定で5分程度の説明が要件になった外来管理加算について、土田委員は「患者との対話ができているかが重要だが、(診療所の再診料2点分の)財源を取ってくるという意味もある。両方とも調査してほしい」と求めた。

 土田委員はまた、「回復期リハの成果主義はしっかり調査してもらいたい。これはかなり問題がある。こういう手法で成果を把握できるか慎重に調査してほしい」と要望した。

■ 勤務医の負担軽減の調査方法は?
 
勤務医の負担軽減に関する調査について、小林麻理委員(早稲田大大学院公共経営研究科教授)は(1)産科や小児科をターゲットにした改定の効果、(2)勤務医の負担が実際に軽減されたかどうか、(3)どのような指標を用いるか――という3つの問題があることを指摘した。

 遠藤部会長は「勤務医の負担軽減の調査は難しい。産科や小児科に集中した議論、診療所と病院の役割分担、医療クラーク、救急などの項目がある」と述べ、項目の選び方によって調査の範囲が異なるとした。
 その上で、「診療報酬の影響かどうかが分からないものもある。インデックスによって変化する。診療報酬の影響を幅広く考えながら、どういう変化があったかを見てもいい。少し検討が必要だ」と答えた。

 これに対し、白石小百合委員(横浜市立大国際総合科学部教授)は「ターゲットを絞って調査せざるを得ない」としながらも、勤務医の意識調査を実施する必要性を指摘。調査を通じて勤務医の意見を広く吸収すべきとした。

 土田委員は「負担の軽減になったという指標をどこで取るかが難しい。1つは勤務医自身の意識で把握はできるが、診療報酬改定の影響は給料にかかわる」と指摘し、勤務医の負担軽減を調査する指標についても検討が必要であるとした。
 遠藤部会長は「診療報酬改定が病院の収支に与えた影響と、それが勤務医の軽減につながっているかが非常に難しい。もう少し検討が必要だ」とまとめた。

 この日の検討会では、調査データの利用方法に関する意見もあった。遠藤部会長は「行政データをどう使うか。これは霞ヶ関全体の問題として議論されているところだ」と問題提起した。
 これに対し、前田委員は「次の改定につながる材料をいかに集めるかが基本。アカデミック利用というよりも政策判断の材料だ」と述べた。
 小林委員も「検証部会のミッションは診療報酬改定がどのような効果を生んでいるか、それを2010年改定にどう生かしていくかであり、ここは押さえてほしい」と強調した。

 診療報酬改定は国民に影響を与える。医療を国民全体で議論するため、情報開示の在り方も含めた再構築が必要かもしれない。


更新:2008/03/27 14:13     キャリアブレイン

このニュースをメールで送る

ご自身のお名前:


送信元メールアドレス(ご自身):


送信先メールアドレス(相手先):


すべての項目にご記入の上、送信ボタンをクリックしてください。

ようこそゲストさん

※無料会員登録をしていただくと、すべての記事がご覧いただけます。

医療ニュース動画

08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。