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沖縄戦集団自決訴訟、28日に大阪地裁で判決

 沖縄戦で住民に集団自決を命じたとする虚偽の記述で名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の元少佐・梅沢裕さん(91)と元大尉・赤松嘉次さん(故人)の弟秀一さん(75)が、ノーベル賞作家の大江健三郎さん(73)と岩波書店(東京)を相手取り、大江さんの著書「沖縄ノート」などの出版差し止めと1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁で言い渡される。名誉棄損の成否とともに、軍による自決命令の有無について、どう言及されるかが焦点だ。

 1945年3月の集団自決発生当時、梅沢さんは座間味島、赤松さんは渡嘉敷島の守備隊長だった。沖縄ノートで大江さんは、集団自決を「日本人の軍隊の命令」によると指摘し、「責任者はいまなお、沖縄にむけてなにひとつあがなっていない」などと記述した。

 訴訟では、自決命令の有無について、原告・被告双方の主張が全面的に対立。

 昨年11月の口頭弁論で、梅沢さんが「自決命令なんか出していない。(自決用の弾薬を求める住民を)死んではいけないと止めた」と訴えたのに対し、大江さんは「自決命令はあったと考えるが、個人の資質、選択の結果ではない。それよりずっと大きい、日本の軍隊による命令」と述べ、法廷は歴史認識を巡る論争の場の様相を呈した。

 原告側は「沖縄ノートなどの記述は虚偽」とし、「残酷な命令を出した非道な人物とされた」と主張。

 被告側は「自決命令を裏付ける証言が数多くある」と強調。「沖縄ノートは原告らを匿名にしており、名誉棄損にはあたらない」としている。

 原告側が訴訟の対象としているもう一つの著作「太平洋戦争」(家永三郎著)では、梅沢さんを実名で登場させ、「自決せよと命令した」と記している。

 集団自決を巡っては、昨年3月、高校日本史の教科書で「軍の強制」という記述を削除する検定結果が示され、沖縄県民らが反発。軍の関与を示す記述が復活した。軍の直接的な命令について、文部科学相の諮問機関「教科用図書検定調査審議会」は昨年末、「現時点では確認できない」との見解を公表している。

2008年3月27日  読売新聞)

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