現在位置:asahi.com>政治>地方政治> 記事

「世論気にして政治できぬ」 可決で一転石原節

2008年03月27日01時52分

 都民の7割以上が反対する中、経営難に陥った「石原銀行」の救済に400億円もの税金が投入されることになった。26日、新銀行東京への追加出資を賛成多数で可決した都議会の予算特別委員会後、石原慎太郎知事は「世論調査を気にしていたら政治はできない」と開き直った。再建の見通しは明るくないのに、1世帯あたり6520円の負担。都民からは厳しい声があがっている。

写真

都議会予算特別委員会の席につく石原都知事=26日午後2時48分、都庁で

 「責任押しつけが見苦しい」「詭弁(きべん)だ」「知事のメンツのためだ」

 同日の委員会で、野党は石原知事を厳しく批判したが、知事は時折天井を見上げるなど緊張感が見えなかった。追加出資案が賛成多数で可決された後、「付帯決議を十分尊重し、万全を期す」とあいさつした時は、神妙な様子をみせた。

 しかし、委員会後は態度を一転し、強気の「石原節」が相次いだ。

 「要するに、都民が議会以上のことを知っているわけないんでね」。世論調査で都民の多くが反対していることを報道陣に聞かれると、「心情論として分かる」と留保しながらも、突き放してみせた。

 再建策の非現実性を専門家も指摘することを問われると、「あの(新銀行が公表している)再建策じゃ、そうでしょうね」と自身の説明不足を棚上げ。再建は「一気呵成(かせい)にできるものじゃない」と開き直った。

 400億円の追加出資を無駄にしないかとの質問には「しません」。無駄になった場合は「責任を取らないといけない」と認めたが、続けて「黙って結果みて下さい。今から水ぶっかけること言ったらだめですよ」と語気を強めた。

 都議会側の反応は様々だ。付帯決議をつけて賛成した与党自民と公明の幹部は「重い十字架だ」「再建計画通りでも1年後は126億円の赤字。直後の都議選に響く」と疲労感を漂わせた。

 野党は一斉に批判のトーンを上げた。民主は付帯決議の実効性に疑問を示し、「守秘義務だ、企業秘密だと言って一切情報を開示しなかった」。知事辞任を迫った共産は「知事は最後に形だけおわびしただけ。責任棚上げの居直りは許せない」と憤った。

 新銀行東京の企画広報IR室の担当者は「重要な決定をしてもらい、再建計画を一丸となって進めたい」と話した。

■都民は厳しい批判 「知事の延命資金」「あまりに安易」

 東京・大手町の新銀行東京本店前。「ここが例の銀行か」と指さして通りすぎる姿も見られた。

 元銀行員で、外資系不動産ファンドで働く男性(61)は「400億円は知事の在任中につぶさないための運転資金、知事の延命資金だ」と批判する。「相手の仕事ぶりを見て決めるのが融資の基本」といい、「新銀行はめちゃくちゃだった」。

 金融関連会社に勤める本田武士さん(33)は、「今の段階で損切りをしてでも400億円を投じず撤退した方がいい」と話す。「人の金を預かる金融業務は、予算使い切りの役所の財政部門とは全く違う。役人ではなく、金融のプロがやらないとだめだ」

 立川市の新銀行立川支店には、5月に新宿支店に統合する旨のお知らせが張り出されていた。

 近くに住む主婦、佐久間良子さん(70)は「これまでの損失をどう補うかを優先すべきだ。そこを明確にしないで追加出資するなんてとんでもない」という考えだ。「そんなお金があるなら、弱い立場の人のために使ってほしい」と話す。

 小平市の主婦(41)は「銀行ばかり優遇するのは納得できない」。知的障害のある長女(18)の医療費は、障害者自立支援法が施行された一昨年から有料になった。「破綻(はたん)しそうだから追加出資なんてあまりに安易。なぜ必要で、追加出資によってなぜ再建できるのか、全く説明がない」と怒りを隠さない。

 一方、新銀行と取引のある人の中には理解を示す人もいた。お台場のIT会社役員の木下秀司さん(34)は「会社を立ち上げた時、大手銀行では口座を作らせてくれなかった。新銀行のおかげでスタートを切ることができた」と感謝する。「追加出資するからには立て直して欲しい」

この記事の関連情報をアサヒ・コム内から検索する

PR情報

このページのトップに戻る