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岡山駅・突き落とし殺人:(その1)また「誰でもよかった」 少年、自暴自棄の凶行

 ◇おとなしくまじめ

 25日深夜、JR岡山駅で起きた突き落とし殺人事件。今春、高校を卒業したばかりの容疑者の少年は「誰でもよかった」と供述しているという。茨城県土浦市の8人殺傷事件でも24歳の容疑者は同様の供述をしている。相次ぐ青少年の自暴自棄ともいえる凶行。一家の大黒柱として働き盛りだった男性の遺族や職場に怒りと悲しみが広がった。

 少年の父親は毎日新聞の電話取材に対し、「被害者の方に大変申し訳なく思っている。相手の人に謝るしかない。今はまだ、心の整理がついていない」と動揺した様子で話した。少年の最近の様子については、「私は仕事に行って帰るだけの生活なので、よく分からない」と語った。

 少年の自宅近所の住民によると、少年の両親は26日午前10時ごろ、泣きながら「岡山に行く」と自宅を出て行った。少年は両親と兄の4人家族で、小さいころから切れやすく、けんかをすると「殺してやる」などと叫ぶこともあったという。父親とは仲が良かったといい、近所の女性は「2人で外食をして仲良く帰ってくることがよくあった」と話す。

 一方、少年が卒業した大阪府大東市の市立中学校の校長によると、少年は中学1年の時に4~5人にいじめられたことがあり、保護者同士で解決したという。

 学校関係者によると、少年は大阪府北部の府立高校を今春卒業したばかり。おとなしくまじめな性格で、放送部に所属。高校3年間で欠席はわずか2日で、問題行動はなかったという。

 同校の校長と教頭によると、少年は昨年9月ごろ進学先として「京都大学の医学部に行きたい」と話したため、学力的に難しいとアドバイスした。クラスで1、2番の成績で、別の国立大学ならば推薦入学ができ、学校側はそれを勧めた。だが、少年は昨年10月ごろ、経済的事情から学校が勧める大学への進学は断念。昨年末の期末試験では、少し成績が落ちていた。

 今春の進学はあきらめたが「働いてお金をためて、大学に進学したい」という希望を持っており、「経理関係の資格を取って就職先を探す」と、昨年12月、簿記3級の試験を受けたが落ちた。学校は就職先を紹介しようとしたがそれは断り、就職先が決まらないまま卒業した。卒業文集の寄せ書きには「いろんな意味でいろんなことがあって、楽しかった」と書いていた。

 ◇假谷さん、異動前で残業後

 亡くなった岡山県道路建設課主任、假谷(かりや)国明さん(38)=倉敷市笹沖=は、妻と小学生の長女、幼稚園に通う次女の4人家族。悲報を聞いて自宅に駆けつけた父親の要さん(70)は「一人息子で正義感が強く、頑固なところもあったが、親の私から見ても子煩悩な父親だった。近々、倉敷市内に家を建てる予定で手付金も払っていたようだった。今は泣いている2人の孫を慰めようもない」と声を振り絞った。

 容疑者の少年について「本当ならたたき殺してやりたいくらいに、はらわたが煮えくり返っているが、日本は法治国家。罪を償い、早く更生して世の中に役立つようになってほしい。こんな事件は息子で最後にしてほしい」と唇をかみしめた。

 同課によると、假谷さんは06年4月に配属され、主にバイパス道の建設や道路の拡幅工事など県道の改良事業に取り組んでいた。今春、水島港湾事務所への異動が決まっており、25日も引き継ぎ書類の作成や残務整理に追われていた。午後10時ごろ「お疲れ様です」と同僚に声を掛け、退庁したという。26日には職場の送別会が行われる予定だった。

 26日未明に病院に駆けつけた西本靖・同課改良班長は「今はショックのほうが大きい」。同僚の一人は「熱心で前向きな性格だった」とぼうぜんとしていた。假谷さんの住むマンションの大家、岡本光弘さん(67)は「温厚な人柄で、こんないい人を無差別に殺すなんて許せない」と語った。【山崎明子、植田憲尚、石戸諭、石川勝義、横山三加子】

毎日新聞 2008年3月26日 大阪夕刊

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