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父ちゃん子なぜ…親「心見抜けなかった」 岡山・突き落とし

2008年03月26日23時17分

 家路を急いでいた公務員の男性が、理由もなく命を奪われた。25日夜、JR岡山駅のホームから男性を突き落としたとされる少年(18)は高校を卒業したばかり。バッグにナイフを忍ばせ、「誰か人を刺してやろうと思っていた」とも供述しているという。被害者の家族や職場の同僚らは悲しみに包まれた。少年の父親は記者会見し、「どうわびたら償えるのか」と言葉を詰まらせた。

 少年の父親(56)は、自宅がある大阪府大東市から急きょ岡山市に駆けつけた。紺のジャンパー、ジーパン、運動靴の姿。26日夕、岡山市内で開いた記者会見では「被害者のご両親、ご家族に本当に申し訳ない」と何度も頭を下げた。

 父親によると、少年は「父ちゃん子」。父親が派遣会社員の仕事をしている合間にも、よく携帯電話で連絡を取り合っていた。

 茨城県土浦市の8人殺傷事件では、夕食時に一緒にテレビニュースを見ながら、「こんなことしたらあかんよ」と言うと、少年は「うん」と答えたという。

 少年は「誰かを刺してやろうと思っていた」と供述し、果物ナイフをバッグにしのばせていたとされる。その点を問われると、父親は「心の底まで見抜けなかった」と苦しい表情を浮かべた。

 少年の一家は、95年の阪神大震災のとき兵庫県尼崎市で被災し、大東市に転居。現在は両親と少年の3人暮らしという。

 父親によると、少年は小、中学校時代にいじめを受け、同級生にゲームソフトを取られたり、暴行され青あざができたりした。中学卒業後に一度だけ、「(いじめられた同級生に)いつかやり返したるねん」と口走ったことがあったが、父親が諭すと、「分かってる」と答え、以後は触れなかったという。

 いじめから逃れるため、自宅から離れた府立高校を選択。卒業後の進路をめぐり、父親が「貧乏で大学に進学させるだけの金がない」と言うと、少年は「1、2年働いて金をため、国立大学にいきたい」と話したという。

 24日にはハローワークに行き、就職先を探していた。事件当日の25日朝は、いつも通り、勤めに出る父親とパートの母親(55)を自宅で見送った。出勤後、父親が携帯電話で「就職に向けて頑張って運動しなさい」と伝えると、少年は「はーい」と答えた。しかし、昼休みに携帯電話をかけた時は珍しくつながらず、午後8時になっても帰宅しなかったため、警察に家出人捜索願を出した。

 父親は「なぜこんな事件を起こしたのか、考えつかない」と手で顔を覆って涙をこらえ、「こんな子を育て、申し訳ない」と謝った。

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