050421nik1.民主党の「公正、中立な報道を求める要請」という名の圧力が効いたのか、マスコミで民主党の扱いが増えたような気がします。
彼らは必死に「争点は郵政民営化だけではない!」といっていますが、他の論点では民主党のいうことはまともなのでしょうか。民主党のマニフェストは選挙が終われば白紙に戻るそうなので、これまでの実際の行動から判断するしかないですね。

というわけで、今回は独占禁止法改正について(公正取引委員会)みてみます。「経済憲法」といわれるぐらい重要な法律ですしね(なお、図は4/21の日経から)。
課徴金引き上げも重要ですが、注目は「課徴金減免制度」でしょう。談合を公取に申告すれば、先着3名まで順位に応じて課徴金を免除ないし減額するという制度で、英語でリーニエンシーというそう。共謀罪を「密告社会を促進する」と非難していたマスコミ・弁護士連中の反応はいかに(どうせ精神的自由と経済的自由は違うとか、刑法と経済法は異なるとか言うんだろうけど)

2.「25年ぶりの大改正」といわれた今回の改正法の、成立までの経緯を振り返ってみます。ソースは公取委サイトと日経新聞。
<第161国会>
 04/10/05 公取委・与党、大筋合意
 04/10/15 閣議決定
 04/11/04 衆議院で審議入り
 04/12/20 「今国会成立見送り」との報道(日経)→継続審査
<第162国会>
 05/03/11 衆議院経済産業委員会で可決
 05/03/15 衆議院本会議で可決
 05/04/19 参議院経済産業委員会で可決
 05/04/20 参議院本会議で可決、成立
採決では自民・公明・共産・社民が賛成し、民主が反対に回りました(8/14の読売による)。結構珍しい展開だと思いますが、なぜそうなったのか検証してみましょう。

3.手がかりはこの記事です。
民主党と財界 独禁法改正阻止でタッグ 党内から批判も(2004年11月24日 産経)Googleキャッシュ
民主、献金増へ「政策評価」期待/財界「強すぎる公取委」に懸念

 企業団体献金の獲得増に向けて財界に攻勢をかけている民主党が、今国会に政府が提出した独占禁止法改正案の成立を阻止したい日本経団連と“共闘”していくことで合意した。日本経団連側は、会員企業が政党への献金算定の目安となる「政策評価」で民主党に配慮する意向だ。今国会での同改正法案の成立は微妙な情勢となっているが、民主党内からは「献金ほしさに財界に政策を売った」(中堅)との声も漏れている。

 民主党関係者によると、財界とのパイプづくりを担当する樽床伸二・団体交流委員長と、古川元久政調会長代理は十月下旬、日本経団連の中村芳夫専務理事と会談し、独禁法改正法案に反対していくことで双方が連携していく方針を確認した。日本経団連側は「環境税導入」をめぐっても民主党の慎重な対応を要請したという。

 独禁法改正案の柱は(1)談合などの大企業への課徴金は現行の違反対象の商品・サービス売上高の6%から10%へ、中小企業は現行の3%から4%へ引き上げる(2)自己申告した違反企業のうち先着三社までは課徴金を減免する(3)公正取引委員会は違反企業に違反行為の排除命令と課徴金の納付命令を同時に出せる−などとなっている。

 日本経団連は「公取委の権限が強化され過ぎる」として「総論賛成、各論反対」の立場をとっており、同改正案がそのまま成立することに強い懸念を抱いている。

 民主党がこうした共闘に積極的なのは、財界の政党通信簿といえる日本経団連の政策評価で高得点を得たいという思惑があるからだ。

 政策評価は日本経団連が今年一月に十一年ぶりに企業への政治献金斡旋(あつせん)を再開した際に始めた。評価結果がそのまま献金につながるだけに、民主党は注目をしている。ところが、一月と九月に発表した政策評価では、いずれも自民党に大きく水をあけられたうえ、評価の対象にならないほど低いものもあった。

 民主党はこれまで党収入の約85%を政党助成金に依存している。「政権交代に向け少しでも資金を増やしていく必要に迫られている」(幹部)。自民党と対抗するうえでも、企業・団体献金を大幅に増やそうというわけだ。

 実際、岡田克也代表が再選された後の九月以降、企業・団体献金への消極姿勢から一転して、十億円を目標に財界への攻勢をかけ、岡田氏自身、財界首脳部と頻繁に接触を図っている。

 独禁法改正案への対応をめぐっては民主党と日本経団連の双方の思惑が一致した形で、今月十日の党経済産業部会と独禁法・官製談合撤廃プロジェクトチーム合同会議で独禁法改正案の説明を行った公取委幹部は席上、「民主党の主張は日本経団連と同じだ」と指摘したほどだ。

 自民、民主の「二大政党」の財界との癒着の動きを攻撃してきた共産党は、「財界献金は政策買収、政治買収だという本質をそのものずばり物語っている」(機関紙「しんぶん赤旗」)と批判している。

産経が自説を補強するために赤旗を引用するのも何だかな、という感じですが(苦笑)

21世紀にふさわしい独占禁止法改正に向けた提言(2004年7月13日 日本経済団体連合会)
民主党の「独占禁止法改正案」のポイント(2004年11月2日?)
なるほど、「事件の内容に応じた課徴金の増減」「審判官に判事経験者(民主党案では法曹資格者)」「官製談合への対応」など、かなり似てますね。

4.国会でもこの産経新聞の記事が取り上げられて大騒ぎになったようです。
衆議院・第161回国会 経済産業委員会 第9号(平成16年11月24日(水曜日))
○中西〔一善・自民党〕委員 〔中略〕
 そして、これは私の意見でありますが、きょうの産経新聞に載っておりまして、愕然としましたが、これは民主党さんに関する記事なんですが、企業・団体献金の獲得増に向け財界に攻勢をかけている民主党が、今国会に政府が提出した独禁法改正案の成立を阻止したい日本経団連と共闘していくことで合意した。民主党内からは、献金欲しさに財界に政策を売ったとの声が漏れていると、この産経新聞に書かれております。
 こういう形で、新聞報道が一〇〇%正しいということを私は言っているのではない。私が言いたいのは、こういうことが実際に起こったら政治家として悲しいということを言っている……(発言する者あり)非常に民主党さんが怒っていらっしゃいますが、火のないところに煙は立たないということでこんな……(発言する者あり)事実でなければ、事実でなければ、怒る必要性はないわけであります。(発言する者あり)
○河上委員長 御静粛に願います。
○中西委員 いずれにいたしましても、なぜこのように怒るのか。私は、新聞報道が一〇〇%正しいとは思っておりませんが……(発言する者あり)
○河上委員長 御静粛に願います。
○中西委員 こういうことが起こるのであれば、抗議をするということを申し上げたいと思います。
〔中略〕
○細野〔豪志・民主党〕委員 それでは独禁法の質疑にいきたいというふうに思うんですが、まず冒頭、先ほど中西委員の方から、我が党の今までの経緯に対して、事実に全く反するものを引用して、事実無根の発言がございました。後ほど理事会の方で精査をして議論させていただきたいと思いますが、そのことにまず冒頭きちっと抗議をさせていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)ちょっと黙らせてください。

取り上げたのが、例のセクハラで現行犯逮捕された議員というのが痛いところですけど…これが一因だったのかどうか分かりませんが(自民党内にも消極派がいたという話もある)、法案成立は次の国会に持ち越されました。

[社説]独禁法改正先送りを憂える(04年12月3日 日経)
自民党も民主党も基本的には賛成の独占禁止法改正が継続審査となった。時間切れという理由だが、両党とも法改正に後ろ向きなところが一部に感じられ、気掛かりである。

継続審査となったため、次期通常国会で成立しても施行は当初想定していた来年十月から伸びて、早くても二〇〇六年一月、場合によっては同年四月以降になる見通しだ。日本経済の談合体質の是正はまた遅れる。
〔中略〕
民主党の対案は違法行為を三回以上繰り返したら課徴金を二〇%とする。この点は政府案より厳しいが、課徴金の減免に関し、三番目以降に違反を申告した企業でも、違反防止の管理体制構築などを条件に、課徴金を最大五〇%まで軽くする。

どの企業も課徴金減免の措置を受けられると、談合などにかかわった企業がそろって申告する可能性があり、不正抑止の効果が弱まる。

民主党案は日本経団連が出した案に似ている部分が目立ち、国会で与党から「政治献金ほしさの対応」という発言も出て一時、紛糾した。

談合への厳しい措置は建設業者などに打撃となるだけに、自民党の中にも法改正に乗り気でない議員がいる。政府案は十月中旬に国会に提出されたのに、提案理由の説明は十一月十二日、審議入りは同十七日と遅れた。これは民主党の抵抗のせいだけなのか、いまひとつわからない。〔後略〕

「いまひとつわからない」って何だよ、素人じゃあるまいし(怒) ともかく議論は年を越すことになりました。<続く>