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【食にメス】ギョーザ事件の思わぬ余波 中国への依存度に驚き
先日、フジテレビのニュース番組で「中国製ギョーザ中毒事件の余波でナシづくりがピンチ」と報じていた。これだけ聞いても、多くの人は何のことかまったくわからないだろう。
日本のナシ農家が「ナシの授粉シーズンなのに、中国産の花粉が輸入されなくて困っている」というのである。ナシの花粉の9割が中国産なのだが、ギョーザ事件の影響で「中国側が日本への輸出を制限している」という。
日本側がギョーザ事件の原因は中国にあると決めつけているので、「中国側の報復措置で、関係のない花粉までもが輸出されないようだ」という。ギョーザ事件の再発防止のために、中国側が日本に対する輸出品の検査を厳しくしているという理由は理解できる。そのために、食品の輸出量が減るというのもわかるが、食品とは無関係の商品まで輸出を制限するというのは、まさしく報復措置としか考えられない。
「そこまでするのか」と言いたくなるが、そんなことをされても「日本側がギョーザ事件をうやむやにすることなど決してない」ということが、中国側にはわからないのだろうか。かえって日本人の反発を買い、ますます中国に対する不信感が増大するだけであり、逆効果のように思えてならない。
こうした中国側の報復ともいえる外交措置も腹立たしいが、それよりも「日本のナシが中国の花粉なしでは作ることができない」ということのほうが、はるかに腹立たしいし、悔しい思いがしてならない。
日本ナシや西洋ナシは、同一品種では受精しないものが多い。そのため、他の品種の花粉を人工授粉させている。その花粉集めに手間とコストがかかる。そこで、人件費が安い中国産に頼らざるを得ないのだ。食品や食材そのものだけでなく、作物の栽培まで中国に依存しなければならないというのは、ビックリ仰天である。
それ以上に、「そんなことで本当に日本の農業は大丈夫なのか」という不安と失望が入り乱れた気持ちになる。これでは、たとえナシの自給率が100%であったとしても、実質は10%ということになる。このように、私たちが知らないうちに中国産がアメーバのように進出しているところが、ひょっとすると数多くあるのではないだろうか。本当の意味での自給率向上を、もう一度考え直す必要がある。(食品問題評論家 垣田達哉)