備えはどうか2008年03月26日 産業界に身をおく人は、1ドル=80円をも突き抜けた、あの1990年代の悪夢のような円高時代を、決して忘れていないはずだ。 日米経済摩擦を背景とするあの円高は、我が国の人件費をドル換算で世界一高いものとした。組み立て産業などを先頭に、多くの企業が生産拠点の海外シフトを加速した。重工業などは国内にあって存亡をかけて「リストラ」に取り組んだ。管理間接部門は徹底的に縮小された。将来を託すべき商品開発部門なども例外ではなかった。製造部門は低賃金の上に雇用弾力性を持つ下請け会社に切り出された。そうやってぎりぎりの競争力を確保したのである。 その製造業はその後の世界的な景気拡大と超低金利を背景にした円安により、今やかつてないほどの活況を呈している。その業況を背景に、各企業とも再び大きく舵(かじ)を切り、国内で人・設備両面からの投資を拡大してきた。海外に進出した企業も国内に回帰して最先端の工場を建設し、重工業各社も設備を増強し閉鎖していた工場を再開した。 現場従業員の増員はもちろんのこと、開発力強化のために技術者の採用も大幅に増やした。各方面から非難された現場派遣社員の正社員への採用替えも進んでいる。この春闘では、賃上げの議論も復活し、一部の企業では初任給引き上げも打ち出された。 そして今、再び1ドル=100円を超す事態を迎えた。その発端である米国景気の先行きや、一向に縮小しない日米それぞれの貿易黒字と赤字、いずれは正常化される我が国の金利レベル等々からすると、1ドル=80円という世界も現実味を帯びてきたように思う。 そうなった時、製造業はどのように対処するのか。もちろん製造業のみならず、農業などについても……。そして、国はそうなってから、再び、内需拡大や産業構造転換の議論を始めるのだろうか。(啄木鳥) PR情報バックナンバー |
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