2008年3月24日

ビジターでのヤンキース戦。ナイトゲームで、寒くて、そして
とってもおなかがすきました。試合後のクラブハウスに用意されている
食事を、マイナーの選手たちが、一気に食べてしまったのです。

開幕が近づくにつれてベンチの人数が減るため、試合の後半に
選手を休ませる交代要員として帯同している、
若い選手たちです。彼らの食べっぷりを見ていたら、２Ａの頃を思い出しました。

若くて、お金もなくて、クラブハウスで出されるものは、貴重なエネルギー源。
出てくるのは、フライドポテトだけ、といったささやかさでしたが、
それでもエサに群がる鯉のごとく、わーっと寄っていって、群れがほぐれると、
そこにはもう何もない。よくてフライドポテトの数本、ひどいと、端っこのカリカリに
揚がり過ぎたあの硬いかけらが、寂しそうに落ちているのみです。
「野菜はないんか野菜は」などと物申せるような状態ではない、それが
「プロ野球選手」の食事でした。

メジャーのクラブハウスに用意された食事が、彼らの目にどう映るかは、
容易に想像できるところ。「他の人の分も残しておこう」という気遣いなど
できるはずもなく、「あるうちに食べる」というオーラが、身体中からにじみ出る。
それが、マイナー選手の、文字通りの「ハングリー精神」につながっていくのです。
「いつかは俺も、ここでこれをゆったり食ってやる」と。

歳でいったら、２０近くも離れた若い選手たちを、
（いっぱい食えよ、大きくなれよ）と、最後のほうは、父親のまなざしで
見守っていた僕。しかし彼らの身体は、僕よりすでに、はるかにでっかいのでした。

フロリダ州クリアウオーターにて　田口壮　

2008年3月23日

２７日のオープン戦を最後に、チームはフィラデルフィアに戻ります。
そこで数試合オープン戦の続きを行い、いよいよ開幕。今日はそれに先駆けて、
陸路でフィリーに戻る、トラック便の荷物出しが行われました。

「なるべくいっぱい出してねー！」と、担当者。
帰りのチャーター便が満席のため、飛行機にあまり荷物を乗せたくないとのこと。
そこで我が家も、できうる限りの荷物をありったけのスーツケースに詰め込んで球場に運び、
あと４日は、着の身着のままで過ごす覚悟を固めました。

カージナルスの頃、トラックで持って帰ってもらう荷物をビニールのゴミ袋で出して、
捨てられるのではとヒヤヒヤしたことがあったため、今回はきっちりスーツケース。
しかし、カージナルスに比べるとかなり規律が厳しいため、たぶん最初から
ゴミ袋は拒否されたでしょう。

カージナルスは、ほのぼのとしたチームでした。
規則もあまりなく、あっても「まあいいかあ」という融通が利いたのですが、
フィリーズは、ほのぼの、というよりむしろ「うきうきわいわい」している割には、
そのへんは、かっちりきっちりしています。

家族が遵守すべき規則を書いた小冊子もあり、
たとえばファミリールーム（家族が試合中に集ったり、試合後選手を待つ部屋のこと）。
カージナルスでは、家族が同伴なら、親しい友人などが足を踏み入れても、多少はＯＫという
部分がありました。しかしフィリーズは、あらかじめ入室する人の名前を登録する必要があり、
登録できるのも、妻、子供、自分の親兄弟、義理の親のみ。
中には、
「独身選手で、きちんとお付き合いをしている彼女がいる場合は、
選手の意思によりその女性を登録することができますが、フィリーズの奥さんたちは、
登録していない女性から頼まれても、一緒に入室させてはいけません」という事項も。
カージナルスでは「私は誰々の彼女なの」と言えば入室できたし、
中には「彼女です」と、別の女性が数週間後に現れたり、
一人の選手に対して「婚約者」が何人もいたり。
それはさておき、
カージナルスで許されていた「多少目をつぶって！」というところが、あまりないのがフィリーズ。

どちらがいい、悪い、ではなくて、単なるチームカラーや土地柄の違いなのでしょうし、
それを知るのもまた、チームを替わる醍醐味のひとつかもしれません。

フロリダ州クリアウオーターにて　田口壮　

2008年3月22日

パソコンが復活しました！

まだ買って１年だというのに、酷使が響いて、液晶画面が焼けてしまったのです。
幸いハード部分は無事でしたが、真っ暗な画面に懐中電灯を当てて、やっと文字が
読み取れるような状態。それではなーんにもできないので、結局入院させて、
本日退院してきました。

パソコンがない。それはまるで、
「こんなことがあったよ！」と家に帰っても、
誰もいない真っ暗な部屋に迎えられたような、そんな気分です。
いえ、家族から無視されて、孤立しているわけではないのです。
ただ、こうやってメールを書かないと、なんだか落ち着かない。
よく考えたらもう７年目を迎えたルーティーンなわけで、
野球と同じくらい、ホームページをアップデートすることが、
生活の一部になりつつあるんやなあと改めて思いました。

この一週間。
オーナー主催のチームパーティーで、
ホテルのボールルームに集まった球団関係者に挨拶して回り、
スーツの背中までしみるほど汗をかきました。
バッティングがへこんでいました。
かわいがっていた若い内野手が３Ａに落ちました。
チームの人数がやたらと減りました。

毎日のそんな出来事を、読んでくれる人がいる。待っていてくれる人がいる。
それはなんとうれしいことなんでしょう。

僕が毎日メールを書いていたら、いつの間にか「ブログ」という言葉が流行り始めました。
正直、その言葉にはいまだに馴染めません。
しかし、メールであれ、公開している日記やブログであれ、
それを読んでくれる人がいる、感情を分かち合える人がいる、という喜びが、
パソコンの前に座る原動力になっているような気がします。

それはプロ野球も同じ。この仕事をさせていただけるのは、
ファンの皆さんがあってこそですから。

今日も田口壮のＨＰにおいでいただき、ありがとうございます。
帰ってきたら家に電気が点いていて、
「お帰りなさい！今日は何があったの？」と言ってもらえたような気分です。
って、我が家はうまくいってますので、誤解のないようにお願いしますね。本当。

フロリダ州クリアウオーターにて　田口壮　

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