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2008年3月26日

◎アニメ文化大使 北陸を売り込む好機にも

 外務省の「アニメ文化大使」に人気キャラクター「ドラえもん」が起用され、世界各国 で日本のサブカルチャーの普及に一役買う。日本のアニメは、その水準の高さと多様さで世界でも群を抜く人気を誇り、わけてもドラえもんの知名度は高い。大使への起用はその証明でもあろう。

 ドラえもんの生みの親である藤子・F・不二雄氏の出身地である高岡市をはじめ、「マ ジンガーZ」などで知られる永井豪氏が生まれた輪島市など、北陸は日本の現代アニメ文化のふるさとの一つと言っていいだろう。金沢出身の台湾ダム建設の父・八田與一の長編アニメも今年公開される。「ドラえもん大使」の起用を機に、石川、富山両県でも、台湾などを中心に誘客を図る上で、アニメも柱に据えて取り組みたい。

 外務省は昨年、「漫画のノーベル賞」をめざして海外の漫画家を表彰する国際漫画賞を 創設するなど、アニメを文化外交の柱の一つに位置づけている。アニメ文化大使は、在外公館などが主催する文化事業などで日本のアニメ作品を上映し、ポップカルチャーを通じて日本そのものへの関心を高めることに狙いがある。アジアなどで人気が定着しているドラえもんの中には、現代日本の生活習慣も描かれていることもあって、大使の白羽の矢が立ったようだ。

 ドラえもんに代表される、こうした海外の日本アニメブームを、ご当地北陸を売り込む 素材として生かさない手はないだろう。昨年は藤子F氏とコンビを組んでいた藤子不二雄●氏の出身地である氷見市に、同氏の作品の原画を集めた「潮風ギャラリー」が開館した。輪島市は永井氏の記念館を来春にも朝市通りの一角にオープンする方針を打ち出すなど、ゆかりの地に拠点となる施設が徐々に整いつつある。

 藤子F氏のふるさとである高岡市に、ドラえもんの記念館的な施設はまだないが、売り 出し中の高岡コロッケとドラえもんを組み合わせたご当地グッズが四月にお目見えするのを機に、官民が知恵を出し合って、ユニークな拠点施設を考えてみても面白いのではないか。こうしたご当地施設めぐりなど、アニメを切り口にした企画を打ち出せば、国内外を問わず、一味違った幅広い層の北陸誘客につながるに違いない。

●は○の中にA

◎台湾との付き合い 日本の主体性が問われる

 台湾の国民党が今年一月の立法院(国会)選での圧勝に続き、総統選でも勝利し、新た な総統に選ばれた馬英九氏が五月に就任し、同党が八年ぶりに政権の座に復帰する。

 日本ではこの台湾の行方を気にする論評が多いように見受けられるが、台湾の政権の担 い手が交代することで問われるのは日本の主体性ではないのか。ここでは指摘にとどめるが、米中関係の変化について大いに注目していかねばなるまい。

 日本は、一九七二(昭和四十七)年の中国との国交正常化により「中国は一つ」との外 交方針の下で台湾との外交関係を断ったが、民間レベルでの交流は続けている。日本は台北に財団法人交流協会の事務所を、台湾は東京に経済文化代表処を置き、それぞれがいわば大使館の役割をしているのである。

 同時に中国が武力で台湾を統一することについても米国などとともに反対の立場を取っ ている。その意味で、いわゆる台湾法で「台湾を諸外国の国または政府と同様に扱う」として、安全保障の面でもそうしている米国ほど明確ではないものの、前総統の李登輝氏が口にして中国を怒らせた「特殊な国家と国家の関係」が中国と台湾の現実だということを暗黙のうちに了解しているわけだ。

 就任後は日米を自由に訪問するのが困難になるとの判断から、馬氏は就任前に日米を訪 ね、友好関係の維持や、これから展開する各政策への理解を求めたいとしている。温かく受け止め、台湾との交流を盛んにしていくのが日本の取るべき道だ。

 台湾については「進化した」とよくいわれる。民主主義が定着し、行政や立法や軍隊が “国民”のものになったということである。共産党一党独裁の中国と大きく異なる点である。中国の台湾に対するアメとムチの使い分けはこれからも変わることがあるまいが、台湾が中国の圧力で根付いた民主主義を放棄するような事態になるとは考えにくい。

 が、台湾が中国に統一されることによって起きるであろうアジア社会の変化を考えてお くことは無意味でない。いかなる場合でも台湾の民主主義を後退させないよう支えていく努力を惜しまないことが日本に求められているのである。


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