(cache) 沖縄タイムス 特集 脱基地のシナリオ

脱基地のシナリオ


<2006年2月7日 朝刊 2面>

脱基地のシナリオ(19)

第1部・依存の構図

基地従業員(上)

不安募る「天国」の職場

 「今回こそは動くのかな」。北中城村のキャンプ・フォスターで働く男性=(40)=は昨年十月末、日米で合意された米軍再編中間報告の詳細を聞き、不安が頭をよぎった。「僕らがどうすることもできないけど、不安は大きい」

 男性は勤務歴十四年。軍事車両の修理部門で、書類の整理や管理を担当する。全国チェーンの大手ファストフード店で六年間勤めた後、転職した。

 「基地で働くまでは、土日出勤は当たり前。年休は一度も使ったことがない。一日十四―十五時間働いたこともあった」という。

 基地で働くようになってから、生活は一変した。「残業もなく土日も完全に休める上に、働きやすい。勤務時間は前の職場の三分の一で、給料は約二倍になった。職場としては天国。ずっと働きたい」と待遇の良さを説明する。

第二の職場

 県内の米軍基地で働く日本人従業員は八千八百十三人。就業者数では、約二万三千人が働く県に次ぐ「県内第二の職場」だ。

 従業員の平均年齢は四十一歳。賃金や勤務時間などは国家公務員に準じ、一人当たりの平均給与は約二十九万円(二〇〇四年)。給与総額約五百四十億円は日本政府が負担する。県内の三十人以上の事業所一人当たりの約二十二万円(同年)と比較しても待遇は格段にいい。

 不況や業績悪化に伴うリストラとも無縁だったはずの「天国」にも、大きな波が押し寄せようとしている。米軍再編の中間報告で、在沖海兵隊約七千人の削減、嘉手納基地以南の基地返還の可能性が盛り込まれたからだ。

半数に影響

 一月六日、北谷町で開かれた全駐労沖縄地区本部の旗開き。照屋恒夫委員長は居並ぶ組合員を前に「今年は過去数年来、経験したことのない厳しい局面になることが予想される」と率直に語り掛けた。

 「雇用への影響を懸念している。一人の失業者も出さないよう、雇用と生活を守ることを最重要課題として取り組んでいく」と続け、基地従業員の雇用確保に全力で取り組むことを強調した。

 同本部は中間報告の実現を想定し、「基地従業員の約四千三百人に何らかの影響が出る」と試算している。

 キャンプ・フォスターで働く男性従業員は旗開きの会場で本音を吐露した。「解雇になった場合のことをチラッと考える。転職を考えても今と同じくらいの収入はかなり厳しいと思う」と表情を曇らせ、こうつぶやいた。「基地に頼らないような産業が充実していればいいのだけれど」(「脱基地」取材班・島田尚徳)

[ことば]

 基地従業員 大きく二つに分けられ、各軍の司令部や部隊で事務員や技術者などとして働くMLC(基本労務契約)従業員と、施設内の食堂や売店などで働くIHA(諸機関労務協約)従業員がいる。給与や勤務時間などに大きな違いはない。

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基地従業員の雇用の確保に全力を尽くすことを確認した全駐労沖縄地区本部の2006年旗開き=1月6日、北谷町・サンセット美浜
基地従業員の雇用の確保に全力を尽くすことを確認した全駐労沖縄地区本部の2006年旗開き=1月6日、北谷町・サンセット美浜


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