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【社会】

医師不足どこで産めば…7カ所に医師派遣へ 厚労省が緊急調査 お産休止・制限 全国で77カ所

2008年3月25日 夕刊

 全国の産科医療機関のうち二十四都府県の七十七カ所で今年一月以降、お産を休止したり、お産取扱件数を制限したりすることを決めたことが二十五日、厚生労働省の緊急調査で分かった。

 開業医の高齢化や、勤務医の異動、退職に伴う人手不足が主な原因。同省はこのうち福島、群馬、長野、静岡、沖縄の五県七カ所について「それぞれの地域でのお産継続は困難」と判断、近隣の大学病院からの医師派遣などの対策を決めた。

 身近な「お産の場」が深刻な危機に直面している実態が浮き彫りになった。日本産科婦人科学会も独自調査で医療機関百十カ所で緊急医師派遣が必要としており、舛添要一厚労相は同日の閣議後会見で「抜本的、構造的改革に向け着実に歩を進めたい」と述べた。

 調査は一月二十四日、厚労省が各都道府県に対し、一月以降にお産休止や制限を実施、計画している医療機関の報告を指示。三月二十四日までの報告を集計、二十五日に開かれた厚労、文部科学、総務の三省による「地域医療に関する関係省庁連絡会議」に報告した。

 それによると、お産を「休止」または「休止予定」としたのは病院と診療所を合わせ二十二都府県計四十五カ所に上った。都道府県別では静岡(六カ所)が最も多く、岐阜(五カ所)、栃木と愛知(四カ所)が続いた。

 里帰り出産を断るなど、「制限」または「制限予定」としたのは十県三十二カ所。最多は神奈川の十二カ所で秋田七カ所、愛知四カ所が続いた。

 休止と制限の両方について報告があったのは、秋田、埼玉、長野、静岡、愛知、島根、広島、佐賀の八県。

 厚労省は七十七カ所のうち七十カ所について「大規模病院などへ集約化した結果でお産の場は確保される」(八カ所)、「近隣の医療機関で対応することで、地域でお産を継続できる」(六十二カ所)など対応が取られているとして、深刻な影響はないとみている。

 残りの七カ所は、医師派遣などの対策を取ることを決定した。

 <産科医不足> 長時間労働やお産事故に伴う訴訟リスク、結婚や子育てによる女性医師の休職などを背景に、各地で産科医不足が深刻化している。必要な医師を確保できずに産科を休止したり、お産を取りやめたりする医療機関が相次いでいる。

 厚生労働省の調査では1994年に全国で1万1039人いた産婦人科の医師は、2006年は9592人に減少した。

 

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