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まちづくりに道路財源 無駄ではないが… 市職員も原資知らず

3月22日7時8分配信 西日本新聞


 産炭地として栄えた福岡県飯塚市の幸袋地区。民家が並ぶ通りに、ひときわ目立つ門構えの和風建築が立つ。「筑豊の炭鉱王」と呼ばれた伊藤伝右衛門の旧邸だ。

 「観光の呼び水に」と市が民間から買い取り、昨春一般公開したところ予想を上回る大盛況に。来場者は1年足らずで23万人を突破した。記者が訪れたある平日も、見物客が途絶えることはなかった。

 だが、この旧伊藤邸の購入・改修費に、「道路特定財源」の一部が充てられていることを知る人は少ない。

 市は、費用の一部を国土交通省所管の「まちづくり交付金」から引き出した。本年度までの事業費2億4600万円のうち同交付金は約8000万円。その中の約3600万円は、道路特定財源が原資だ。

 「スーパーブレンド方式です」。市側は、同交付金の財源について国交省からこんな説明を受けたという。「道路にしか使えない金とそれ以外の金。混ぜてしまえば、道路以外に使っても罪悪感が薄れると国は考えたのではないか」。市幹部OBは皮肉る。

 市商工観光課の担当職員は「『まち交』なしでは旧伊藤邸の一般公開は実現できなかった」とした上で「まち交自体はいい制度と思うが、道路を造るために徴収した税金を別のものに使っていいものかどうか」と困惑の表情を浮かべた。

   ◇   ◇

 小高い丘で重機がうなりを上げる。熊本県天草市の中心地、旧本渡市街が一望できる城山公園。老朽化のため、改築が決まった市立天草切支丹館の解体工事が進む。

 市の地方債残高は約632億円(2007年度見込み)。「ハコモノ投資の余裕はない」(市幹部)が、市街地再生は喫緊の課題。そこで市が目を付けたのが、まちづくり交付金だった。

 切支丹館改築のほか空きビル改修や観光案内板設置など、市街地82ヘクタールの再生を1つの事業にまとめ、交付金を得ることに成功した。総事業費23億1400万円のうち、約9億2500万円が同交付金。市の直接の財政負担は4億7500万円で済む。

 「道路財源が使われているとは…」。市担当者は国交省から交付金の内訳を示されるまで原資を知らなかったという。06、07年度の交付金5億8300万円のうち、道路特定財源からは6100万円が支出された。

   ◇   ◇

 地方の都市再生を支援する「まちづくり交付金」。使途の自由度が高く自治体からは好評だが、原資の一部は道路特定財源だ。税収の余剰分が道路とは無関係にみえる「まちづくり」に流れる構図は、特定財源の根拠を揺るがせる。
(天草支局・沢辺克己、地域報道センター・富田慎志)


■まちづくり交付金

 市町村の都市再生を支援する目的で国土交通省が2004年度に創設。導入以来4年間の総額は約8070億円。市町村が策定した都市再生整備計画を国交省が採択すれば、計画した事業費の最大4割分を支給する。「まちづくり」を推進する目的があれば、歩道拡幅や駅前広場の整備、建物整備のほか、イベントの支援といったソフト事業にも使え、補助金よりも自治体の裁量が広い。


=2008/03/22付 西日本新聞朝刊=

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最終更新:3月22日11時13分

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