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リポートしまね

出雲阿国座は拙速?

2008年01月15日

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出雲阿國座(仮称)の早期建設を訴える看板=出雲市大社町で

規模や運営、基本計画まとまる―膨らむ費用、疑問次々―
 市長「全市民に理解求める」

出雲市が同市大社町に建設する伝統芸能の上演施設「出雲阿國(お・くに)座(仮称)」に、市民らから疑問の声が相次いでいる。公共料金の値上げで痛みを強いられる中、建設費や運営費の赤字が新たな負担に転嫁されないか、と危惧(き・ぐ)するためだ。施設建設で観光客を呼び込みたい西尾理弘市長は、理解を得る努力を続けていくとしている。(森 直由)

 昨年末、まとまった基本計画によると「阿國座」は今年10月に着工、2010年春の開館を目指す。約800席を設け、年間180〜260日間の使用を想定、来場者数を年に約10万人とはじく。主な事業として、松竹大歌舞伎の定期公演(年間10日間)や夜神楽公演(同5日間)などを企画。運営には地元主体の指定管理者を選定する方針だ。

 昨年12月17日の市議会。市の計画に疑問を呈する意見が相次いだ。「出雲にとって大きな賭け。あまりに拙速で、時間をかけて計画の詳細を説明すべきだ」(民主党系市議)「事業内容が不透明で、財源の投入に理解が得られない」(共産党市議)「市民の多くは慎重、反対論。財政を不安視する声もあり、時間をかけて議論し、一番いい時期に実施すべきだ」(公明党市議)

 背景には、同市が上下水道使用料や、ごみ収集手数料の値上げを相次いで発表してきたことがある。行財政改革を推し進める同市は、一方で市役所の新庁舎(建設費約65億円)、出雲弥生の森博物館(同10億円)の建設も推進中。新たな施設建設には、市民の理解が得られにくいとみられる。

 「阿國座」の総事業費は、当初予定の30億円から42億円へ跳ね上がった。舞台装置や外観の整備費などが想定以上に膨らんだ。年間の運営費も、市職員を派遣して人件費を賄わなければ、年間2千万円近くの赤字となる見通しだ。

 建設予定地周辺の商業者の間からも、不安視する声が漏れる。出雲そばなどを振る舞う店で調理長を務める狩野英之さん(50)は「建設自体には賛成」としながらも「市の財政が厳しいなか、施設をどう維持していくのか、漠然とした不安がある」。喫茶店を営む岩井佳子さん(53)は「大社町内には、既に文化ホールを備えた『大社文化プレイスうらら館』がある。二つの施設がうまく稼働するのか心配」と語った。

 「早期実現!!門前町再生開発 出雲阿国座建設」

 建設予定地近くの道沿いには、地元の商業者らが立てた看板がある。目的の一つは、人通りが減った出雲大社の門前町の再生だった。要望を受けた同市が「阿國座」構想を「活性化の中核拠点」と位置づけた。

 自民党系のベテラン市議は「各自治体は競って観光誘致に動いている。そう大きな投資ではない」と、新たな観光資源として期待を寄せる。西尾市長も「財政、運営状況を分かりやすく説明して、全市民の理解を得るように努力しなければならない」としながらも、計画通り建設を進めたいとしている。

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