■予習 対談会 押井守צ松岡正剛
「21世紀のISIS:イシス ~想像力と映像~」
「21世紀のISIS:イシス ~想像力と映像~」(公式HP) (Production I.G告知)
2007年3月10日(土)に『織部賞が生んだ「縁」と「演」~ 水木しげる・押井守 ~』と題して、押井守氏と松岡正剛氏の対談会や『イノセンス』の上映会、展示会が行われます。
というわけで、開催が明日に迫りました。
対談をより楽しむために、一夜漬け(^^;)の予習です。松岡正剛氏と押井守氏のつながりということで若干ネットで調べたことを以下引用。
◆松岡正剛氏の『イノセンス』評
・千夜千冊『未来のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン
第九百五十三夜 04年3月23日
Seigow's Book OS / PIER
Villiers de l'lsle-Adam : L'Eve Future
斎藤磯雄 訳
リラダンがここからエジソンとエワルドに交わさせた会話は、おそらく人間人形思想をめぐる「義体文明の可能性」に関する最も高邁精緻なプレゼンテーションである。(略)
リラダンが言いたかったことは、「或る超人間的な存在が、この新しい芸術作品の中に呼び醒まされてゐて、これまで想像もつかなかったやうな神秘が決定的にその中心を占めるといふこと」である。
これは、義体文明にこそ新たな宇宙思想や地球精神が胚胎するであろう可能性についての、それこそ全き確信ともいうべきものだった。(略)さて、以上の、この一文のすべてを、完成したばかりのフルCGアニメーション・フィルム『イノセンス』を世に贈った押井守監督に捧げたい。(略)
もっとも、『イノセンス』のみならず、押井守はもともと青年期からのただならない人間人形感覚の持ち主で、とくにハンス・ベルメールの人形描写にはずっとぞっこんだった。(略)
『イノセンス』の映像はほとんど完璧ともいうべき場面を連続させていた。傑作などという言葉は使いたくない。こうあってほしいと思う映像場面を徹底して超構造化し、細部にいたるまで超トポグラフィックに仕立てていた。。(略)
『イノセンス』――。これは21世紀の押井リラダンが掲げた映像音響版『未来のイヴ』なのである。ともかく、ともかくも、脱帽。
これは見逃してた。松岡正剛氏がここまで『イノセンス』を絶賛していたとは知らなかった。しかも今までみた『イノセンス』評の中でも最大級の賛辞。工作舎のというか、編集工学研究所のあの松岡正剛氏がここまで誉めるというのは凄い。
なにしろこの一文は、リラダンの諸作と『未来のイヴ』について論じた長文だが、実は「押井守に捧げ」るための文章なのだ。寡聞にして松岡正剛が押井守を評価しているというのを知らなかったので吃驚。
もっとも織部賞の選考委員に松岡正剛氏が入っていたことで、きっと押井守が選ばれたと想像できるので、驚くことではないけど。ちなみに押井守は第一回の織部賞受賞者で1996年のこと。だから『イノセンス』で選ばれたのではなく、その前作の『攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL』(1995)が評価されたのだろう。
◆対談タイトルの「21世紀のISIS:イシス」とは?
・千夜千冊『未来のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン
ポーを夢中で読んだリラダンは、22歳か23歳のときにほぼ1年を費やして一つの物語を書きこんだ。
これが未完の傑作『イシス』(ISIS)である。どのようにであれリラダンを語るには、まずもってこの『イシス』を知らなければならない。チュリヤ・ファブリヤナ伯爵夫人の、物語ともプロフィールともつかない肖像画作品である。(略)
千夜千冊のサイトが、http://www.isis.ne.jp/「イシス」というアドレス。そして自ら開催する編集学校がISIS。
ISISは"Interactive System of Inter Scores"の略である。「相互記譜システム」とか「相互的情報編集記譜システム」などと訳す。インターネット上に「編集の国」というヴァーチャル・カントリーを想定したときに命名した。この「編集の国」の一隅に、2000年6月、編集学校が産声をあげたのである。だから相互記譜ということを重視してISISとした。(略)命名にあたっては、やはり女神イシスを連想してもらえることを念頭においた。イシスは再生の女神であって、月の舟に乗るものなのである。
対談のタイトルの「イシス」の意味が気になっていたのだけれど、松岡正剛にとってどうやら重要なキーワードになっているようだ。「21世紀のISIS:再生の女神」としてどんな話が語られるのか?『イノセンス』の上映会も同時に行われるので、必然的に話題は『イノセンス』へ。ということは「再生の女神」は草薙素子なのか??
◆『GARUM』の話題?
・松岡正剛の千夜千冊『AKIRA』大友克洋
押井守の『GARUM』も同じこと、ぼくはそのプロトタイプ版を六本木のライブハウス「ヴェルファーレ」で発表してもらったのだが、やはり商業状況から突き落とされて、以来8年近くの中断になっている。まあ、このことはここではこの程度にしておくが、押井や大友の表現世界をどのように評価し、これを享受できるかということは、実際には社会と産業の仕組みの対決とともにあるわけなのだ。
対談の中で、『GARUM』パイロットフィルムが映写されたら最高なのに。いまだ未見なので期待したい。
ではこの続きは、対談レポートをお楽しみに。(いつ書けるかなあーー。)
◆関連リンク
・ヴィリエ・ド・リラダン, 斎藤磯雄訳『未来のイヴ』
・ヴィリエ・ド・リラダン, 斎藤磯雄訳『ヴィリエ・ド・リラダン全集 第5巻』「イシス」 Isis 収録
・ヴィリエ・ド・リラダン (amazon)
<当Blog記事>
・水木&押井ワールド~それぞれの世界~
・会場状況と整理券 対談会 押井守צ松岡正剛
「21世紀のISIS:イシス ~想像力と映像~」
織部賞が生んだ「縁」と「演」~水木しげる・押井守~
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コメント
shamonさん、興味深い書きこみ、ありがとうございます。
>>エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」(THE FALL OF HOUSE OF USHER)を連想しました。
ポー、実は恥ずかしながら未読でろくなレスが返せません。基礎教養のはずなのにね。
>>バトーがロクス・ソルスに侵入後落下していくところは
「メエルシュトレエムに呑まれて」、
襲い来るガイノイドは「黒猫」のプルートゥ、
かも^^;。
ポーも「プルートゥ」出てくるのですね。やっぱ一度は読んどかなきゃね。
投稿 BP | 2007.03.16 00:54
連投失礼します。
「未来のイブ」は未読ですが、あらすじは全く違うものの
エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」(THE FALL OF HOUSE OF USHER)を連想しました。
ゴシックの要素溢れる暗黒と退廃に満ちた黒い宝石のように美しいポーの最高傑作に。
ラスト、二人が崩壊に飲み込まれるあたりがなんとなく似てる。
リラダンがポーを自らの中に取り込んで同一化した証でしょうか。
ポーは怪奇幻想短編小説家という扱いをされることが多いですが、
彼がアメリカ文学に及ぼした影響は多大なるもので、
彼の存在がなければかのヘミングウェイも存在し得なかったと言われています。
日本では江戸川乱歩がペンネームの元とし、
かなり影響を受けていますね。
その江戸川乱歩がSF作家の星新一を見出したことを考えると、
意外にポーとSFの距離は短いのかもしれません。
「イノセンス」をリラダンを通したポーの影響を受けている、
との視点から見ると、
バトーがロクス・ソルスに侵入後落下していくところは
「メエルシュトレエムに呑まれて」、
襲い来るガイノイドは「黒猫」のプルートゥ、
かも^^;。
投稿 shamon | 2007.03.11 22:00