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いじめによる自殺対策のための法務省及び文科省の取組について質問しました
第168回国会 法務委員会 第6号 平成十九年十二月十一日(火曜日) 午前十時開会
○松浦大悟君 無所属の松浦大悟です。 初質問の際、地元秋田県の自殺率の高さと自殺対策について質問をさせていただきました。今回は、いじめ自殺の問題について質問をさせていただきたいと思います。 警察庁の統計によりますと、昨年の自殺者数は九年連続で三万人以上で、その中でも学生生徒は八百八十六人を数え、一九七八年の統計開始以来最多となってしまいました。もちろん、そのすべてがいじめを原因としたものではありませんが、いじめによる自殺も含まれていると当然予想でき、早急にいじめ対策を行い、いじめによる自殺を防がなくてはなりません。 〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕 そこで、大臣に質問です。 去年の十月に起きた福岡県筑前町でのいじめ自殺の問題で、御遺族に対し福岡法務局から調査記録が開示されましたが、これほとんど黒塗りにされて何も分からない状態でした。これに対し大臣は会見で理解を示されましたが、この真意はどういうところにあったのか、お聞かせください。 ○国務大臣(鳩山邦夫君) 今、西岡先生がお見えになりましたけれども、私は西岡先生の下で文教行政を学び、先生と同じように文部大臣をやったという経験がございます。 そういう経験がございまして、また、この筑前町は私の選挙区の隣町でございますので、このときには、実は事件後に現地に行って教育委員会あるいは学校、いろんな方とお会いをしてきましたけれども、何かもう、皆さん非常に元気をなくしていて、聴き取りというかインタビューをしても、困り果ててろくに答えが返ってこないというような状況であったことを思い出すわけでございます。 〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕 今御質問にあった黒塗りという、マスキングというのか分かりませんが、黒塗りの部分というのは、これは、法務省の人権擁護機関が行う人権侵犯事件の調査というのは、まだこれは、妙な話ですが、基本法がありませんね、人権擁護については。したがって、関係者の協力を得て行う任意の調査であって強制力がない。強制力がないから、関係者から、それこそプライバシー等も含んだものでよろしくお願いをして、そしてやっとしゃべっていただくという、そういうような資料が非常に多いわけでございまして、強制力がなくてそういう状況で情報を得ているものですから、これを他の方々に見せるあるいは公表するというたぐいのものではないんです。 そういう意味で、また、そういうことをすれば今後の御協力が得られなくなるという面もあるものですから、部分開示という形にさせていただきました。 ○松浦大悟君 部分ではなくて、ほとんどが黒塗りということは大臣も十分御承知のとおりです。 大臣は最近、法制審に対して、刑事事件の少年審判で被害者や遺族の傍聴を認めることと諮問されましたけれども、これは犯罪被害者や遺族の権利に対する世論の高まりを踏まえたものだというふうに思います。同じ観点から、この件に関してもう少し御遺族の立場に立った取扱いをしていただけないものでしょうか。だれから聴き取ったか分からないような形にして、少しでも御遺族のお気持ちにこたえる工夫をしていただけないかと思うのですが、どうでしょうか。 ○国務大臣(鳩山邦夫君) 制度として、今回の部分開示という決定について、先月三十日に審査請求がなされておられますね。 審査請求というのは、言わば控訴というか不服申立てのようなものであろうと思いますが、この審査請求がなされた場合は、内閣府の諮問機関である情報公開・個人情報保護審査会に諮問するわけですから、同審査会からどういう答申が出てくるかというのを見守っていきたいと思います。 ただ、前段委員がおっしゃったように、今、犯罪の被害者の事柄を、被害者を守るというか遺族を守るというか、遺族の方に満足して、まあ満足というのも変でしょうけど、理解をしていただくということがとても大事だということをすべての面でやらせていただいています。これは内閣全体で取り組んでいます。経済的な問題も含めて取り組んでいる。今回の死刑を執行させていただいた事柄に関する公表も、やっぱり一番は遺族の方々のお気持ちという部分があったわけです、私の心の中にも。ですから、あなたがおっしゃったことというのはやはり大事なことだとは受け止めます。 ○松浦大悟君 これでは、だれを守るための調査だったのかということが分かりません。学校を挙げてのいじめ隠し、地域を挙げてのいじめ隠しが行われている中で、今の大臣の御答弁は、国を挙げてのいじめ隠しだと誤ったメッセージを子供たちに与えてしまうのではないかと危惧をいたします。 このような態度でいじめに関する相談を行っているのではないかと危惧をするわけですが、法務省はどのようにいじめに関する相談を行っているのか。子どもの人権一一〇番に寄せられた相談に対してどのように対応しているのか、教えてください。 ○国務大臣(鳩山邦夫君) これは、私に似合わずちょっと読ませていただきますが、法務省の人権擁護機関では、いじめ等の子供の人権問題に関する相談については、法務局の常設相談所があると。それから、インターネットによる人権相談受付システムにおいて応じております。そして、全国の小中学生を対象にして、子どもの人権SOSミニレターと、趣旨が書いてあって、これを切り取って封筒を作って、ここに書いて、これを封筒にして送るというようなことを配布して、手紙によって子供たちからの相談に応じていこうと。それから、子供の人権問題の専用相談電話、子どもの人権一一〇番も設置しています。そういうようなことで、なるべく子供たちにとって分かりやすい相談体制を取っているということでございます。 ただ、実数とかそういう点については、もし必要あれば事務方から答弁させます。 ○委員長(遠山清彦君) 答弁求めますか。 ○松浦大悟君 いいえ。 ○委員長(遠山清彦君) よろしいですか。 ○松浦大悟君 その調査をしてもそれを明かすということをしない法務省にどこまで本音の相談が寄せられるかということは大変疑問があります。 では、文部科学省はいじめの定義をこのたび変更をいたしました。その調査の結果、大幅にいじめの件数が増えたわけでありますが、どのように変更してどのように増えたのか、教えてください。 ○政府参考人(布村幸彦君) お答えいたします。 昨年、いじめにより児童生徒が自らその命を絶つという痛ましい事件が発生したことをきっかけに、いじめ問題が大きな社会問題となり、いじめの実態把握の在り方につきまして様々な御指摘をいただいたところでございます。このような状況を踏まえて、専門家の方々にも御意見を伺いながら、いじめられた児童生徒の立場に立って、より適切にいじめの実態を把握することができるよう、そのいじめの調査に当たっての定義を見直したところでございます。 具体的には、これまでの調査の定義では、自分よりも弱い者に対して一方的に、また、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているものという形で、一方的、継続的、深刻なという限定的な文言を外しまして、今回の調査からは、当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより心理的な苦痛を感じているものという形で定義の見直しを図ったところでございます。 それとともに、学校におきましても、アンケート調査、個別面談という形で児童生徒に即して実態が把握できるよう努めたところで、その結果、いじめの件数が大きく増え、小学校の段階では十二倍という数字も出てきたところでございます。 ○松浦大悟君 この調査結果というのは都道府県によって大きくばらつきがありますよね。それはなぜでしょうか。都道府県によっては名前を記入させてアンケートを取ったり、中には教師から聞くだけに終わっているところもあるようですが、改善の余地はないんでしょうか。 また、二〇〇六年度の小中高等学校の児童生徒の自殺者数は、文部科学省の調査では百七十一人でした。一方、警察庁の統計では、二〇〇六年は三百十五人です。年度と年のずれはあるものの、大きな差があります。カウントされなかった案件の中にいじめ自殺が含まれていないか懸念をいたしますが、なぜこのような差が生まれているのか、教えてください。 ○政府参考人(布村幸彦君) お答えいたします。 最初に、調査結果の都道府県ごとのばらつきについてでございますけれども、先ほども申し上げましたように、今回の調査に当たりましては、都道府県、市区町村、学校でアンケート調査、個別面談等の様々な取組が行われ、その方法が一様ではなかったという結果が都道府県の認知件数にも差が出ているのではないかというふうに考えております。実態におきましても、いじめの状況に違いがある面もあろうかと思いますけれども、その手法の違いが認知件数の差に出てきているのではないかというふうに考えております。 この件につきましては、いじめの問題については、児童生徒に即して適切に、できるだけ速やかにいじめを発見し、早期に対応するということが重要でございますので、今後、文部科学省におきましては、今回の調査結果に関しまして、学識経験者の方々の協力をいただき、検証、分析を始めているところでございます。その結果につきましては次回の調査の実施に反映させ、実態の把握がより適切に行われるように取り組んでまいりたいと考えてございます。 もう一件、いじめの自殺の件数につきまして、警察庁との調査の違いについてでございますけれども、文部科学省の調査は、学校が自殺について把握をし、それらを教育委員会が取りまとめて報告をするという形になってございます。一方で、警察庁の調査は、警察の捜査権限に基づきまして検視、事情聴取の結果を集計したものということで、調査方法が異なりますので、実態として違いが生じているところでございます。 昨年の秋のこのいじめの問題に関する臨時国会などで警察庁の統計数値との開きがあるという御指摘をいただきました。自殺の状況調査の精度を高めるため、今回は警察庁から各都道府県ごとに集計した数字の提供をもらいまして、各都道府県教育委員会で把握、集計した数字と照らし合わせるという作業は行ったところでございますけれども、まだその数字の開きがあるというのが現実でございます。 その理由として幾つか挙げるとすれば、学校として自殺であることを裏付けを確認できなかった、あるいは自殺であるという判断ができない場合、それから遺族の心情に配慮して自殺として計上していない場合があるというふうに把握しているところでございます。 ○松浦大悟君 学校が自殺を隠したがっているという背景が見える御答弁だったと思います。 このいじめの調査というのは、昭和六十年に始まって、平成六年、そして今回と、いじめの定義が変わるたびに大きく数字が変動しているというものです。しかも、昨日文科省の方から聞いた話によると、調査をしているのは学級の担任だそうです。学級の担任はステークホルダーです。こうした利害当事者が調査を行うというような統計は在り得ません。 このようなまゆつばのデータに基づいて何をどのようにしようとしているのか、このような相談や調査などにより文部科学省としていじめの現状をどのようなものと把握しているのか、お聞かせください。 ○政府参考人(布村幸彦君) お答えいたします。 いじめの問題につきまして、先ほど申し上げましたけれども、どうしても遺族の御心情を踏まえて学校として対応せざるを得ないという面も実態としてあるようでございますけれども、いじめの問題につきましては、いじめられた児童生徒の立場に立って、より実態に即して把握できるよう、いじめの定義を先ほど申し上げたように見直しをさせていただきました。 また、各学校におきましても、アンケート調査、個別面談を実施するということで、いじめの問題に徹底して取り組み、いじめの実態をより適切に把握するという努力を重ねているところでございまして、また児童生徒の実態を一番よく把握しておりますのは担任の教員でございますので、教員がまず実態を把握して、それを学校として取りまとめるという作業をしているところでございます。 このいじめの問題については、どの学校でも、どの子供にも起こり得るという認識の下に、件数の多い少ないの問題以上に、いかに迅速に対応し適切に対応できたかということが重要でございますので、今回の調査もきっかけとしていじめの実態をより正確に把握するということ、そしてまた、その一つ一つを解決につなげるということが重要であると認識をいたしているところでございます。 その際にも、児童生徒一人一人に学校の教員、養護教員あるいはカウンセラーがきめ細やかに対応するとともに、家庭、地域と連携して学校を超えた対応を図ることも重要であろうと認識をいたしているところでございます。 今後とも、各学校においてこのような取組が一層進むように、行政として支援を重ねてまいりたいと思っております。 ○松浦大悟君 福岡の事例においては教員がいじめに加担していたわけですから、今の答弁は白々しく聞こえます。 大臣、いじめをなくす方法、いじめ研究には二つあるというふうに言われています。 まず一つ目は、いじめる子に、仲良くしようだとか優しくしようだとかというふうに呼び掛ける精神論です。周りの子供たちに傍観してはいけないと呼び掛けるものもこの中の一つだと思います。今やっている方法ですよね。しかし、これは余り効果を上げていません。 もう一つの方法というのは、環境を変えようというものです。具体的には、クラス制度をなくしたり、あるいは老人ホームや保育所を併設したりするというやり方。地域の方々がより多く学校にかかわることによって、そういう仕組みをつくることによって学校内の流動性を高めていく、そうすることによって常に同じ人間関係の中で閉じこもらなくてもいい、そういう環境をつくるというやり方です。 社会学には、環境が変わればそこに集う人間関係が変わるという昔からの古典的な考え方があります。大臣は「ビフォーアフター」というテレビ番組を御存じでしょうか。古くなって使い勝手が悪くなった家を建築家の方が毎回リフォームをしていくという、そういう番組です。この番組が驚くべき点は、確かに家も立派にリフォームされるんですが、使い勝手が悪い家に住むことでどこかぎくしゃくしていた家族関係も家をリフォームすることによってリフォームされるという、そういうことが起こっているわけですね。 私は、学校においてもこうした視点からいじめ問題をとらえ直していくことができるのではないかというふうに思っています。学級という狭い空間から児童を解放させることがいじめを減らすことにつながるといういじめ研究というのは昔からあるわけですが、そのような検討は文科省においては行われているのかどうか、聞かせてください。──じゃ、大臣にお願いいたします。 ○国務大臣(鳩山邦夫君) 私は、あなたがおっしゃった意味では後者の方が絶対に効果があると思うんです。それは、法務省でも人権教室とかそういうことを企画しておりますけれども、環境が変わると人間は変わる、だから私は自然との共生ということを訴えているのはそういう面もあるんです。 私は学校五日制を導入した文部大臣でございます。業者テストを禁止した文部大臣でございます。OECDの調査等がありまして、学力を落とした張本人は鳩山邦夫だと厳しく批判されることもあります。しかし、OECDの点数が少しでも上がる、上がることはいいかもしれないけれども、それよりは、たくましいというのか、あるいは和の心を持った子供たちにする、そういう環境の変化をつくり出すということが重要だと思った場合に、私は委員のおっしゃる後者の方に重点を置くことがいじめによる自殺を減らす道だと思います。 ○松浦大悟君 大臣がおっしゃるとおり、学校のシステムを変えればいじめは減るんです。学校五日制にしたことによって不登校が大きく減りました。これも一つの事実です。 学級をなくすまでは行かなくても、学級という狭い空間を流動化させるために、地域の方々にボランティアでいろいろと入っていただく、活動を手伝ってもらったりすることは可能だというふうに思います。さらには、これは民主党の鈴木寛先生なども提言をされているコミュニティ・スクール、これを導入していくこともいじめを減らすことに役立つというふうに私は考えます。 では、そのいじめ自殺に関して、暴力系のいじめについて質問をしたいと思うんですが、集団による暴行や金品の恐喝など明らかに悪質ないじめに対しては、私は警察に通報することを促すべきであると思っています。 文科省でも今年の二月に「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」という通知を出されましたが、これはどのような視点に立ってつくられたものなのでしょうか、そして今後どのように運用されるのでしょうか、文科省、お答え願います。 ○委員長(遠山清彦君) 松浦君の質疑時間は終局しております。簡潔に御答弁をお願いいたします。 ○政府参考人(布村幸彦君) お答えいたします。 いじめ、校内暴力を始めとした児童生徒の問題行動への対応につきましては、未然防止と早期発見、早期対応に努めることが重要であるという認識を持っております。学校は問題を隠すことなく、教職員一体となりまして問題行動を起こす児童生徒に対して粘り強い指導を続けるとともに、毅然とした対応を行うことが必要と、そういう認識に立っているところでございます。 先生御指摘の本年二月の通知におきましても、その趣旨を踏まえて、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことはなく、直ちに警察に通報をし、その協力を得て対応することも指摘しているところでございます。 委員会、学校がこうした通知の趣旨を踏まえまして、問題行動を起こす児童生徒に対して毅然とした対応を取っていただくよう、引き続き指導をしてまいりたいと考えております。 ○委員長(遠山清彦君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。 午後二時三十四分散会
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by まつうら ¦ 22:13, Sunday, Dec 16, 2007 ¦ 固定リンク
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