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必死の医療機関 あの手この手、医師獲得合戦

3月25日8時0分配信 産経新聞


 ■年俸3500万円/新築住宅/研究費300万円…

 慢性的な医師不足が言われる中、各地の医療機関が激しい医師獲得合戦を繰り広げている。大都市から離れた地方では高額年俸を提示するところや、豪華な戸建て住宅を用意するところまで登場し、その必死さが医師不足問題の深刻さをクローズアップさせている。(神庭芳久)

 「上限3500万円」の大阪府泉佐野市の市立泉佐野病院は、年俸を前面に打ち出し、医師獲得に乗り出している。3月末で麻酔科の常勤医師が体力的な理由で退職するためだ。病院では欠員に備えて約半年前から医師を募集していたが、応募がなく、高額年俸を提示することになった。

 公立病院にとって「3500万円」という年俸は、経営トップの病院事業管理者の2倍以上の額。病院では「何人かの問い合わせがあり交渉中」と話す。

 和歌山県新宮市では来年度予算に、医師用住宅5戸の建設費など約3億5000万円を計上した。産科医不足から、市立医療センターで分娩予約の一時中止を検討する事態に追い込まれた経験を持つからだ。

 新しい医師用住宅は、耐震機能を備えた5LDK。同センター庶務課は「家族がいる40代の中堅医師を想定している。定住してもらうためにもそれなりの住宅が必要」と説明する。

 長野県は、県内に一定期間住むと契約した医師に研究費名目で上限300万円を支給する制度を始めている。即戦力確保のため、県庁に「医師確保対策室」も設けられた。対策室では「金銭で簡単に医者が来るとは限らないが、行政の支援範囲は限られる」と医師不足の実態を嘆く。

 ≪深刻な地方≫

 他にも、待遇を改善したりして医師を呼ぼうとする医療機関は各地にある。とりわけ大都市から離れた地域の病院で、医師不足は深刻だ。

 地域医療に詳しい東北大医学系研究科の伊藤恒敏教授は「医師の絶対数が不足する中、獲得合戦は結果的に、医師の玉突き移動を招いているだけ」と指摘。「地方は病院の集約化で人材を厚くし医師への指導ができるといった環境を整備するなどの、医師を引きつける魅力ある病院づくりが必要」と話している。

                   ◇

 ■国の補助金も効果なく

 小児科、産科・産婦人科、麻酔科といった医師の不足は、医療機関にとって深刻な問題になっている。厚生労働省は、医師不足に悩む地域に研修医を派遣する中核病院などに補助金を出す支援などを行っているが、現在のところ、効果が医療現場に表れるまでに至っていない。このため、地方の病院が独自に医師獲得に動き始めた。

 同省の調査によると、平成18年末の産科・産婦人科医数は1万74人で、10年前と比べて約1割の減少となっている。小児科医は1万4700人で10年前よりも若干増となっているが、地域格差は深刻化。15歳未満の子供10万人への小児科医数は最多県と最少県で格差は2・5倍だった。

 小児科、産科・産婦人科、麻酔科の医師不足の背景には、「勤務が激務」「患者が医療過誤を訴える訴訟リスクが高い」といった理由で、なり手が減っていることがある。麻酔科では、高度化した手術が増えることに比例して需要が高まっていることも原因になっているとされる。

 平成16年度にスタートした研修医制度が、とりわけ地方の医師不足を一層深刻にしているとの指摘もある。

 新しい研修医制度は、全国の臨床研修病院から研修先を選択できるというもの。従来は新人医師が出身大学の付属病院の医局で学んだ後に、医局の指導のもと地域病院に「配属」されてきたが、新制度ではこの循環がうまく行かなくなっているという。

 医師不足に悩む地域は必死だが、地域医療問題に詳しい城西大学の伊関友伸准教授は「かつての医療サービスに比べ、現在は医療の高度化や高齢化する患者への説明など対応に手間がかかる。少しぐらい医師が増えたとしても全国的には焼け石に水」としている。

最終更新:3月25日8時0分

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