福田総理の瀬戸際戦略
いよいよ貴方の出番ですよ。
そう福田総理が谷垣政調会長に言ったようだ。
日銀総裁人事について国会同意が得られない状況が明らかとなったときに、福田総理は、私に任せてください、と党の役員会で発言したようであり、参議院で案の定、田波日銀総裁人事案が不同意になった後も、福田総理の周辺からは特段動揺した様子は伝わってこなかった。
そのうえでの発言のようだから、福田総理がいよいよ勝負に出たことが窺える。
道路特定財源の全面一般財源化も視野に入れて、租税特別措置法改正案の修正協議を進めて下さい、という明確な指示が谷垣政調会長に出されたのである。
大きく政策の舵を切る、という表明である。
総理に就任して間もなく半年になろうとしているが、テロ特措法の改正以上に重要な国の懸案事項について、民主党の提案を受け入れることもやぶさかでない、というメッセージを発信したのである。
このメッセージは一見民主党に向いているようで、実は自民党や霞ヶ関に対してのものだと思う。
現在の局面を打開していくためには、自民党の政策の舵を切らざるを得ない。
道路特定財源の使い道についてこんなに出鱈目なことが罷り通っていたとは、知らなかった。
国民の批判をしっかり受け止めていくためには、道路整備中期計画の見直しを進めなければならないし、国土交通省の財布のようになっていた道路特定財源のあり方も変えていかなければならない。
財務大臣を務めてきた谷垣さん、貴方の出番ですよ。
党の中で色々反対の動きが出てくるでしょうが、今しか、日本の政治の舵を切るタイミングはないんですよ。
よろしく、お願いします。
そう、福田総理は谷垣政調会長に指示されたのではないだろうか。
切羽詰っているからこそ、大胆な政策転換が切り出せる。
年度内の予算関連法案の成立がほとんど絶望的になり、国、地方を通じて行政の大混乱が必至になった今だからこそ出来る大勝負である。
いざとなったら衆議院の解散権も自分にはある。
新しい政策群を提示して、それにあくまで反対するというのであれば、そのときは衆議院を解散して国民の信を問えばいいだけ。
何も決まらない、決められない、という現在の状況を、いつまでも続けるわけにはいかない。
ここは、国民に大胆な政策転換を訴え、整合性のある政策群を示すとき。
そう、福田総理は、判断しているのではなかろうか。
さすがに道路特定財源の全面的な一般財源化までも視野に入れて修正協議に入る、ということまでは想像もしなかった。
総理が消費者庁の設置の方向性を総理が示されたときには、どこまで本気なのかと半信半疑だったが、自民党の消費者問題調査会で消費者庁設置等を内容とする中間提言を取りまとめるまでに来た。
とても総理の支持がなければ、こんな提言など日の目を見るはずも無かったぐらいの大胆な提言である。
福田総理は、日本経団連をはじめ経済界や役所サイドから様々な抵抗が出てくることが予想されるような、国の行政の大改革をやろうと決意したようである。
消費者の目線、国民の視点で国の行政のあり方を根底から作り変えて行こうというのだから、郵政民営化以上に霞ヶ関の抵抗は大きいだろう。
それでも、やり遂げるしかない。
福田総理は、そう覚悟したようだ。
もっとも、私は、これだけで民主党との政策協議進むとは思わない。
年金、医療、介護の社会保障政策の抜本見直しの具体的方針が、まだ用意されていないからである。
ワーキングプア対策、日雇い派遣労働の禁止等を内容とする労働者派遣法の改正等の一連の労働施策の見直しの方針もまだ示されていない。
しかし、7月のサミットを迎える頃までには、社会保障施策の大転換の方針も提示されるのではないかと予想している。
現時点では、政策協議の大きな枠組みを示しただけで終わるが、4月、5月、6月と徐々に新しい政治の流れを作るための動きが本格化してくるのだと思っている。
総理が一旦口に出した以上、後戻りは出来ない。
当然のことである。
当初の武藤総裁案は、民主党の大幹部と目される議員から民主党の4役を説得しますから、と請け負われたから提示した。
民主党が何故武藤氏を不同意にするのか理解できない。
やはり、小沢さんと直接話をしないといけませんね。
福田総理は自民党の役員会で、そうも述べたようだ。
昨日、総理は与謝野馨前官房長官と30分程会談している。
与謝野氏は小沢一郎氏と囲碁対局を通じて福田総理との指しの会談をセットした人物だ。
現在の自民党の中では、小沢氏との唯一のパイプになる人かも知れない。
さらに総理は、中川秀直元幹事長とも50分間にわたり会談(密談と言うべきでしょうね)している。
福田総理は、着々と布石を打っている。
福田総理の練りに練った瀬戸際作戦が今、発動された、という私の読みは間違っているだろうか。