非情であることが求められるとき
福田総理は、頑固ですね。
若手の議員が私にそう言う。
この度の日銀総裁の候補者選びのことを言っているのだ。
民主党の鳩山由紀夫幹事長が名前を上げている候補者を政府から日銀総裁の候補として提案すると、野党の民主党が人事権を持つのと同じことになる。
政治がこんな風に人事に介入することを許してしまえば、行政府と立法府との緊張関係やパワーバランスが失われてしまう。
武藤が不同意になったのは残念だが、今の政治状況では仕方が無い。
人物としてはこれ以上の適材はいないのだが、さて次に誰を指名するか。
民間人の名前を上げても、それですんなり決まりそうな状況ではない。
国会の審議でもみくちゃにされるだけ。
たとえ不同意にされてもあまり本人の名誉が傷つかない候補者を上げるしかあるまい。
これでも不同意になるというのであれば、その責めは甘んじて受けるしかない。
大蔵省の次官経験者で、国際協力銀行の総裁を務めている田波君だったらこんな損な役回りでも引き受けてくれるかも知れない。
そんな風に福田総理は考えて田波氏の名前を上げたのではないか。
案の定、不同意になった。
マスコミの批判が一斉に自分に向かっているのは、止むを得ない。
これから1週間は針のむしろだろうが、ここはぐっと我慢するとき。
こんなときに騒ぎ立てるおっちょこちょいの顔をよく見ておこう。
誰が本当に信頼できる政治家か。
誰が、本当に日本の将来を託するに足りる政治家か、分かるはずだ。
そろそろ、内閣の改造を考えるか。
福田総理の現在の心境を憶測すると、こんなものだろうか。
福田総理も頑固で、非情なところがある。
政治家である以上、いつもへらへらとお追従を続けているわけにはいかない。
ダメなものはダメ、という割り切りが必要なときがある。
どうやら、今がその時のようだ。
マスコミは福田批判一色だが、私には、今、福田総理が本当の力を発揮しているように見える。
福田総理の戦いは、もともと逆境の中での戦い。
あくまで筋を通すことでしか、この逆境を乗り越えることはできない。
中途半端な妥協は、道を誤ることになる。
逆風の中でこそ、福田総理の真価は発揮されるのである。
今求められているのは、頑固で非情な政治家である。
簡単に自分の信念を曲げない政治家。
自分自身の個人的な損得を超越している政治家。
そして、世論に左右されない政治家。
そう言えば、小泉元総理がそうだった。