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【主張】海洋基本計画 権益を守る戦略が必要だ
海洋権益の確保を打ち出した以上、どう実効的に守るかを示さなければ、不十分と言わざるを得ない。
政府が5年間の海洋政策の指針として閣議決定した「海洋基本計画」の問題点だ。
基本計画は昨年7月施行された海洋基本法に基づき、首相を本部長とする総合海洋政策本部でまとめられた。これまで各省縦割りで連携を欠いていた海洋政策を一元的かつ包括的にまとめたことは前進である。
日本近海に相当量が見込まれる固体状のメタンガス「メタンハイドレート」や希少金属を含む海底熱水鉱床などの将来のエネルギー資源の探査、開発を進め、今後10年程度で商業化を目指そうというのも当然だ。
問題は、東シナ海における日本の排他的経済水域(EEZ)での鉱物資源などの海洋権益について試掘の着手もできない状況が続いていることだ。
基本計画は「わが国の権益を確保」するとしたものの、どう確保するかについては「制度上の整備を含め検討し、適切な措置を講じる」にとどめた。先送りであり、これでは自らの海洋権益を守ることはできない。
昨年4月、与野党の賛成多数で成立した海洋基本法と海洋構築物安全水域設定法は、東シナ海で石油・ガス田開発を進める中国によって日本の海洋権益が脅かされており、どう対処するかが法制定の出発点だったはずだ。
中国は自国の大陸棚が沖縄諸島に近い沖縄トラフまで自然延長しているとして、日本側が主張する日中中間線を認めていない。中国は20年以上、一方的に資源を開発している。平成16年には日本側海域での日本の資源探査を妨害し、翌年には最新鋭のミサイル駆逐艦などを中間線付近に航行させた。
日中両国はその後、「東シナ海を平和・協力・友好の海とする」との合意を首脳間でまとめ、共同開発に向けての協議を行っているが、中国の主張は変わっていない。
こうした問題に対し、海洋基本計画は「国際ルールに則した解決を追求」するとしている。だが、係争水域での中国の一方的な開発は国連海洋法条約違反の疑いが指摘されている。国際ルールを守ろうとしない相手に果たして通用する枠組みなのか。政府は試掘を含め海洋戦略を練り直すべきだ。