救急搬送検証のポイント説明「受け入れ困難理由など」

 消防庁の検討会が先ごろまとめた報告書に、救急患者を適切な医療機関に搬送できたかなどを議論する救急搬送の検証の場をメディカルコントロール(MC)協議会が担うとの趣旨を盛り込んだことを受け、消防庁は3月24日、同庁初となる都道府県MC協議会担当課長会議を開いた。救急企画室の松野忍課長補佐が救急搬送を検証する際のポイントについて、「活動記録票に受け入れ照会時の相手の職種や連絡先、受け入れられなかった場合はその理由を一言書いておくと事後の検証に役立つ」などと説明した。

 消防庁の「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」は先ごろまとめた中間報告書に、救急搬送先を適切に選定したかどうかや、救急医療情報システムが円滑に活用されたかなどを協議する救急搬送の検証の場として、都道府県や地域MC協議会を提案する内容を盛り込んでいる。また、21日に開いた救急業務高度化推進検討会で、2次救急医療機関の約4割が「(対応できるスタッフや設備が不足して)処置困難」などの理由で受け入れられなかったとする実態調査の分析結果を公表。「各地域で『処置困難』の理由を分析してほしい」と求めていた。これらを受け、消防庁は救急搬送の検証の場を今後MC協議会が担うことを都道府県の担当者に周知するため、初の担当者会議を開いた。

 松野課長補佐は、奈良県や大阪府で昨年あった受け入れ困難事例をもとに検証のポイントを解説。「消防機関側と医療機関側の情報が食い違っている。まずは情報を精査して共通認識を持った上で分析してほしい」と述べた。事後検証に役立つように、救急隊が作成する救急活動記録票に、受け入れを照会した際の相手の職種や名前を記録することを求め、「処置困難で受け入れられなかった場合には、その理由を一言書いておいてほしい」と述べた。医療機関側にも同じように記録を残すことを求めていることも付け加えた。また、医師から「もう少し情報がほしかった」という声も聞くことがあるとした上で、患者のバイタルや状態が明確に医療機関側に伝わっていたかも検証してほしいとした。

 さらに、「2次救急対応と見られる患者で、ずっと2次の受け入れ先を探していても見つからない場合がある。どこかで3次を探すということも考えてよいのでは」と搬送先を探す際の運用に柔軟性を持たせることも提案した。「とにかく見てくれという粘りも必要」と述べ、一度受け入れを断られても少し経つと医療機関側の状況が変わって受け入れられる可能性もあるので、何度も当たってほしいと強調した。

 広域搬送する際には、「どこから医療機関の情報を取ったのか、救急医療情報システムを見たのか、見た場合はリアルタイムに更新されていたのかなどを確かめてほしい」とし、事後の広域搬送の検証に役立ててほしいとした。

 今回実施した、救急医療機関に対する受け入れ照会回数などの実態調査について、来年度も引き続き実施する考えを示した。今回は、各地域で集計方法にばらつきがあり、白紙で提出した消防本部もあるなど集計不能のデータがあったことに「次回からはそれではすまない」と苦言を呈した。救急活動記録票への記載などを徹底するよう求め、調査への協力を呼びかけた。

■検証の場、救急医療対策協議会でも可
 会場から、「すでに救急医療対策協議会(救対協)で救急搬送の検証を進めているが、どうしたらいいのか」と質問が出たことに対し、開出英之救急企画室長は、「動いている組織として考えているので、地域によっては救対協がベースでも構わない」と述べ、地域の実情に応じた検証の場の構築を求めた。
 救急医療に関する問題を幅広く検討する救対協は、厚生労働省の呼びかけにより1997年以降に各地で設置が始まったが、消防庁が管轄するMC協議会との兼ね合いもあり、地域による活動差が指摘されている。開出室長は、「救対協とMC協議会については今後整理していきたい」との考えを示した。

■メディカルクラーク活用を
 厚労省医政局指導課の佐々木孝治課長補佐は、2008年度の診療報酬改定で「医師事務作業補助体制加算」を新設したことを説明し、「救急医療情報システムの入力の更新などに役立ててほしい」と述べ、メディカルクラークを活用してほしいと強調した。
 「救急患者受け入れコーディネーター」を来年度に立ち上げることも説明。地域の救急医療に詳しい医師をコーディネーターとして救命救急センターなどに配置するものと説明し、効率的な搬送に役立ててほしいとして活用を求めた。


更新:2008/03/24 21:15     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。