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【ぬくもり】亡き友に贈る命のフルート/川崎の奏者・伊藤さん
- 2007/05/28
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フルートを奏でる伊藤さん=4月21日、ミューザ川崎シンフォニーホール
「香澄ちゃん、久しぶり」。ミューザ川崎シンフォニーホールで開かれたコンサートの壇上に飾られた女子高生のパネル写真は、県立野庭高校(当時)時代の吹奏楽部の後輩。九年前にいじめを苦に自ら命を絶った小森香澄さん=横浜市、当時(15)=に一人の奏者が語りかけた。
県内や都内でフルート講師として奔走する伊藤友里加さん(26)=川崎市幸区=と、香澄さんの父・新一郎さん、母・美登里さん夫妻との間で、音楽を通じた交流が続いている。
四月に行われたコンサートは、小森さん夫妻が活動する特定非営利活動法人(NPO法人)の主催。仲間のフルート奏者とともに出演した伊藤さんは、夫妻にとって「短い生涯だった愛娘(まなむすめ)の記憶を広げてくれる」(美登里さん)貴重な存在だ。
交流のきっかけは、高校卒業後三年が経過した五年前の二〇〇二年春にさかのぼる。
伊藤さんは、小森さん夫妻を新聞紙面で知り「記憶が薄れる前に、ご両親の知らない香澄ちゃんの部活動中の姿を知らせなければ」との使命感に駆られた。自問自答の末、手紙をしたためると、「ぜひ直接お話ししたい」と夫妻からすぐに返信が届いた。
夫妻に会い、部活動のオリエンテーション後、湘南の砂浜で写真に納まった思い出、伊藤さんが描いた四コマ漫画に「よく笑う子」という印象を抱いたことなどのエピソードを語ることができた。「教えてくれてありがとう」と小森さん夫妻から感謝された。
美登里さんは「伊藤さんと話していると、当時の香澄がその場にポンと現れ、一緒におしゃべりしている気分になる」。亡き愛娘がよみがえる瞬間を提供してもらっている、という。
コンサート終演後、伊藤さんは友人として、教育者として、気持ちを新たにした。この夏の命日、香澄さんの墓前で語りかけようと思う。
「生徒が感受性豊かなうちに、命の尊さを伝えるよ」
神奈川新聞コンテンツ
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