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2008年3月23日(日) 朝刊 1・29面
沖縄の怒り全国に訴え/きょう午後 県民大会
大会実行委決議案確認/米兵事件続発
 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」(主催・同実行委員会)が、二十三日午後二時から北谷町の北谷公園野球場前広場(雨天時は同公園屋内運動場=北谷ドーム)で開かれる。

 大会は宮古島、石垣市でも同時開催される。

 二十二日、大会を呼び掛けた六団体による幹事会が那覇市の県教育会館で行われ、日米地位協定の抜本改定などを要求する決議案やプログラムを最終確認した。

 関係者らは「県民の痛みと怒りを全国へ広げる大会にしたい」と強調した。

 大会では、開催地の野国昌春北谷町長のほか、東門美津子沖縄市長、翁長雄志那覇市長が登壇し、あいさつする。

 三市町長を含め少なくとも十三市町村長が参加する予定。二十二日までに、市民団体や労組など九十五団体から大会の趣旨に賛同する協賛金が集まった。

 大会決議案は、戦闘機、ヘリの墜落事故や爆音、さらに女性への性暴力事件が起きた今年二月以降も凶悪事件が頻発していることを指摘し、「基地被害により県民の人権が侵害されている」と厳しく批判。

 その上で、日米両政府に対し、(1)日米地位協定の抜本改正(2)米軍による人権侵害の根絶(3)実効性ある再発防止策(4)米軍基地の整理・縮小と兵力削減―の四項目を求める内容となっている。

 また、女性団体や教育、労働団体、地域住民代表、性暴力の被害者らが壇上に立ち、それぞれの立場から抗議の意思を表明する。

 大会実行委は今月八日に正式発足。超党派の大会を目指し県議会へ要請を繰り返したが、自民党県連は組織参加を見送り、仲井真弘多県知事も二十一日、不参加を表明した。

 実行委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長は「米兵による事件の背後に人権問題がある。県民の痛みと怒りを全国へ広げていける大会にしたい」と決意を述べた。

 実行委は大会終了後、四月中旬をめどに上京し要請行動を行う予定。

     ◇     ◇     ◇     

犯罪被害 共闘誓う/神奈川の事件当事者

 「基地がなければ起こらない事件で、米軍に対する思いは私たちも同じ。一緒に闘っていると感じたい」。在日米軍による犯罪・事故の被害者の会の山崎正則さん(60)=横須賀市=と椎葉寅生さん(69)=横浜市=が、「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に参加するため二十二日、来県した。山崎さんは、米兵の犯行で妻を失った。椎葉さんは米軍戦闘機墜落事故の被害者だ。沖縄と基地への思いを共有するために二十三日、二人は北谷公園に向かう。

 「米軍は再発防止を何度も言うが事件は減らない。妻の事件の時も『二度とこのようなことは起こさない』と言い、外出禁止などやったが何にもならない」。山崎さんは、不満を一気に話した。

 二〇〇六年一月、山崎さんの妻は、金目当ての米空母乗員に惨殺された。山崎さんは同年十一月、日本政府や米軍の管理責任を問い損害賠償を求める裁判を起こし、現在も係争中だ。「私だって大変だった。被害者が声を出すのは勇気のいること」と被害者を思いやり、「国の政策で基地を置くなら、基地から出すな。米軍任せでは駄目だ」と、国の責任を厳しく問う。

 椎葉さんは一九七七年、自宅近くに米軍機が墜落、自宅を失い妻も全身にやけどを負った。「横須賀でも、沖縄と同じように、次から次へと事件や事故が起こっている。どこの県民というのではなく、同じような被害を受けている者として、一緒に闘いたい。被害者がもっと腹を立てて、怒らないといけない」と話した。

 「私たちのような被害者を二度とつくらないでほしい。不幸にして被害者になった人がいたら、やれるだけのことをしてあげたい」。二人は、昨年六月に二人の仲間と同会を立ち上げた。「沖縄で、多くの人に勇気をもらって帰り、向こうでまた頑張りたい。それが、また沖縄の人たちを元気づけることになればと思う」。二人は静かに、参加し連帯することの意義を話した。

「被害者名」記し批判/産経・世界日報にチラシ

 二十二日に県内で宅配された産経新聞と世界日報の折り込みチラシに、米兵による暴行事件の被害者の実名とも読める氏名を記載して被害者を批判する文書が含まれていたことが分かった。チラシの折り込みを依頼した国旗国歌推進県民会議の惠忠久会長は「氏名を記したのは軽率だったかもしれない」と話し、世界日報は販売店にチラシの回収を命じた。

 チラシには被害者を批判する文章のほか、「県民大会を開かせるな、自民党、公明党は絶対に参加すべきではない」などとした惠会長の主張がA4紙二枚に記されている。

 惠会長は、数百部を同日の両紙朝刊に折り込むよう販売店に依頼したという。記載された名前は実名ではないが、惠会長は実名かどうか把握しておらず、「チラシはある文章を引用して作ったが、名前を記すことの意味はよく考えていなかった。被害者の人権を指摘されれば多少、軽率だったかもしれない」と述べた。

 沖縄タイムスの取材に対し、世界日報の黒木正博編集局長は「同日夕方ごろ、沖縄の販売店から報告を受けた。不穏当な表現だと考え、すぐに回収を命じた」と話した。

 産経新聞社大阪本社の広報担当は「折り込み広告は販売店が判断して入れている。公序良俗等に反するものは控えるよう販売店には言っている。内容の確認をしていないが、もし事実なら遺憾に思う」としている。

 県人権協会の永吉盛元事務局長は「被害者である、という立場をまったく理解していない。本当に実名を出していたとしたら、甚だしい人権侵害で悪意に満ちた態度だ」と憤った。「言論の自由があると言うかもしれないが、私たちの社会で到底許されるものではない」と述べ、強い抗議が必要との認識を示した。



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