2008年03月22日

「新文化」取材

 出版業界の専門紙に「新文化」という新聞がある。
 昨日3/21は、その新聞の取材を受けることになっていた。
 13:30千歳発の便に乗るべく、家を出る。
 札幌は晴れていて暖かい。
 最寄り駅から空港行きリムジンバスに乗り込むと、エージェントのエリカから電話。
 空いているバスの最後部に乗っていたので、小さな声で出る。
「今、どちらかしら」
「これから空港」
「まあ! 間に合うの?」
「大丈夫だ」
 東京の空を聞きそびれたが、携帯電話で調べると朝は雨だった模様。
 私が行けば晴れるだろう。

 羽田空港はまさに日が射していた。
 が、風もあり、気温も低い。
 厚手のコットンシャツにデニムのジャケットだけでは心許ない。
 冬の装いの人もまだ多い。
 失敗したかなと思った。
 品川経由の山手線で池袋へ。
 サンマークの高橋編集長からメール着信。
「5分ほど遅れます」とのこと。
 今日、取材があることを知り、刷り上がったばかりの拙著「クリムゾン・ルーム」を届けてくれるというのだ。
 待ち合わせのカフェには、約束の17:00ちょうどに着く。
 新文化の石橋氏が、アシスタントを伴って、すでに到着している。
 お茶を注文し、一服する。
 煙草の残りが少ないことを訴えると、石橋氏がアシスタントさんにお金を渡し、買いに行かせてくれる。
 恐縮する。
 17:03、編集長到着。
「今朝の11時に刷り上がった分です」とのこと。
 いよいよ「本物」の書籍『クリムゾン・ルーム』を手にする。
 初めての子供を抱くようで、面映ゆい。

「新文化」のインタービュー。
 新聞記者という人たちは普通よりかなり明晰な頭脳を持っているので、質問がすべて厳しい。
 編集長と併せて1時間と40分も話した。

 19:00より、リブロ作家ゼミ。
 2007年の6月から始まったこの講座で、12人の著者が書籍を出版し、あるいは出版が決定した。
 懐かしい顔もあれば、今回会えなかった顔もあった。
 とにかく、最終回に著作の印刷が間に合ったので面目が立った。
 この講座は別に、本の書き方を教えてくれるものではない。
 だが、ひとつのアイデアが原稿となり、編集者の手を経てのちにタイトルが決まり、営業サイドの思惑や販社、そして書店側の協力によって、書籍という「商品」が出来ていくありさまを生々しく見ることができる。
 マルチメディアの世界でパッケージを出していたので、自分の「作品」が、あるところから「商品」になることには慣れているつもりだった。
 しかし、一冊の書籍にこれだけ多くの人が関わっていること、これから関わることに、そら寒いような気さえする。
 今回、サンマーク社からは、大御所・鈴木成一先生のブックデザインをもらった上、新人としては破格の初版部数をいただいた。
 また、書店リブロからも、常識を超えた配本注文があったと聞く。
 ありがたいことだ。
 サンマークの担当編集者・桑島嬢から、立派な花束をいただく。
 これはダリアか?
 真っ赤な花は「クリムゾン・ルームのイメージで」とのこと。

 21:00、ゼミが終了し、軽く一杯のビールで乾杯。
 リブロ各店の店長さんから、著書へのサインを求められる。
 まだ、サインはないのである。
 たどたどしく、楷書で自分の名前と日付を書く。

 池袋三越そばの、炭焼きレストランで二次会。
 店まで歩く途中、襟元が寒いので、グリのマフラーに狙いを付けた。
 薄いピンク色の軽いマフラーを巻いてもらい、すっかり暖かくなった。
 店では、奥のボックスに、編集長、長島縦、稲垣有、グリ、営業部の池田るり子嬢、株式会社もしもの実藤さんらと陣取る。
 桑島嬢は、少し離れたカウンターにいる。
 ペヤングのヤキソバを主食にしている青年実業家・実藤さんに、(氏がまだ知らぬという)やきそば弁当をプレゼントすることを約す。
 この日、酒を飲まない編集長は、いつにも増して上機嫌だった。
 池袋駅で、固く握手をして別れる。
 同じ方面のこととて、グリも同行した。

 そうなる予感はしていたのだが、私の最寄り駅へ移動することになる。
 長島縦を除いては、みな同じ電車の沿線に住んでいる。
 私が食堂にしている近所のダイニング・バーは、カウンターに一人いる他は貸し切り状態だ。
 るり子嬢、縦、有、青春出版社の川崎氏、桑島嬢で広々とテーブルを占領し、ピッツアやフィッシュ&チップスやサラダなどを軽く食する。
 チーズケーキが絶品で、都合3つも頼んだ。
 みな、生まれたばかりの拙著の話題で盛り上がってくれてうれしい。
 桑島嬢は責了者でもあるので、安堵感もひとしおなのだろう。
 いつにも増して、くつろいでいた。

 3時近くまでその店にいた後、拙宅へと移動する。
 エリカからメールが着信していることに気づく。
「本の仕上がりを拝見したわ。素晴らしい出来ね。
 高木さんは気に入っているかしら?」
「おおいに」と返事をした。
 長島縦がクローゼットから寝袋を取り出し、
「じゃ、俺はお先に仮眠を取らせてもらうぜ。みなさん、ごゆっくり」と二階へ上がっていく。
 二部屋あるうち、居間として使う予定の部屋の、床暖房を入れてやる。
「ああ、それで充分だ。おかまいなく。今日は、おめでとう、な」と言って、横たわる縦。

 川崎氏と桑島嬢、るり子嬢が帰っていったのは、もう朝ぼらけ、6:30ごろだったか。
 散らかったテーブルを整えてくれた有と、だらだら雑談していると、ノックもなく縦が現れた。
「おまえさんたち、ずっと起きてたのかい」
「おまえはよく寝られたか?」
「ああ、ぐっすりさ」
 縦は自分でコーヒーを淹れ、ゆっくりをそれを飲み干し、有とともに帰って行った。

 目が冴えていたが、身体は疲れていた。
 リモコンの雨戸を2カ所閉めて、ソファに身を伸ばした。
 暗がりの中で、携帯電話のロゴが、紫色に明滅している。
 開いてみると、エリカからのメールだった。
 03:21の着信だ。

「この本には、なんとなく手応えを感じているの。
 飲み過ぎには注意して。
 来週、次作の話を出来たらいいと思っています。
 編集長から連絡があったのよ。「あと3つは書いてもらう」って。
 素敵な話じゃない?」

 実に素敵な話だ。
posted by TAKAGISM at 08:40| Comment(0) | 仕事
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