刈田病院再生へ正念場 住民挙げた支え必要宮城県白石市の公立刈田総合病院が正念場を迎えている。4月以降、医師の数が大幅に減少し、さらなる退職の危険性からも脱し切れないからだ。再生には、あらゆる人が痛みを分かち合い、知恵と力を結集する必要がある。刈田病院では3月末までに、32人の医師のうち6人が研修修了、開業などで退職。他に4人が流動的で、楽観視できない。残留する医師も「業務過重が続くなら去る」と明かす。 病院は2005年の看護部長更迭に始まり、昨年は当時の院長と対立した医師4人の退職と、揺れ続けてきた。 組織自体の問題を指摘する声は絶えずあった。現場軽視と人事の不備、チェック機能のなさが最たるものだろう。みやぎ県南中核病院(大河原町)と比べ経営的に悪くはないし、技師や機器の質も高いと医師も認めている。それなのに危機に陥った。院長不在も続く。 「混乱の責任を誰も取らない。説明もない」。ある医師の言葉は、現場の少なからぬ閉塞(へいそく)感を裏付ける。 12日夜、大河原町であった地域医療再生講演会で、城西大の伊関友伸准教授は明言した。「刈田は医師不足が深刻。2年持つかどうか」 講演後の取材には「医療ができなくなれば職員の大量解雇もあり得る。管理者や院長職務代理は、職員の生活を考え意思決定を」と述べた。 残された時間は多くない。3つ提案したい。 住民は医師への敬意を再認識し、地域医療の現状を知り、医師を守るために行動を。全国では母親グループなどが勉強会や啓発をして病院を支えている例がある。白石でもできるはず。新院長の早期赴任を求める声の高まりがほしい。市議会は使命感を持ち現状を常にただすこと。 次に病院。「命を守る」という原点に返り、医師はできる限り残ってほしい。矛盾するようだが前院長(現顧問)体制からの脱却は避けて通れないのではないか。プラスマイナスをはかりに掛けて漂流するより、再出発を印象づけた方がいい。医療内容の絞り込みは、専門家の診断を勧める。 最後は管理者である風間康静市長。医師や看護師とよく話し合い、何らかのけじめをつけなければならない。そうでないと再生計画も示せまい。必要なら人と金の投入を惜しむべきではない。 刈田病院の危機は白石市の危機。県南全体にも影響する。老若男女、部外者はいない。すべての人が一歩踏み出す勇気を持ってほしい。 (白石支局・村上朋弘)
2008年03月24日月曜日
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