「あの一発の銃声で家の柱が崩れてしまった気がする」。愛知県長久手町で昨年5月、警察官ら4人が死傷した立てこもり発砲事件で、殺人などの罪に問われた元暴力団組員大林久人被告(51)の裁判を前に、死亡した特殊部隊SATの林一歩警部=当時(23)=の両親が心境を語った。初公判は24日午前10時から、名古屋地裁で開かれる。
「一歩さんがけがをして、病院に搬送されました」。昨年5月17日の事件当日、愛知県警から連絡を受け、父千代和さん(52)は、母真美子さん(51)とともに病院に向かった。途中、ラジオから「重体」とのニュース。晩酌中だった千代和さんの代わりに運転していた真美子さんの手が震えていた光景を今でも鮮明に思い出すという。
「仕事で役立つからとマニュアル車を購入したり、夜中にジョギングをしたり、若いのに自分の家族のために将来設計も着実に立てていた」。一歩さんの思い出話に及ぶと、千代和さんは「涙腺が緩くなった」と目頭を押さえた。
大林被告に対しては「まだ何の感情もわかない」としながらも、「狙ったわけではない」などと殺意を否認している点については「現場にも行った。あの距離だと狙ったのではないかと思えてしまう」と話した。
今でもふとしたことで一歩さんを思い出し、涙するという真美子さんも「大事に大事に育ててきた子だった」と号泣。防弾チョッキのすき間を銃弾が突き抜けたことについて「あと1センチずれていたら助かったのに…」と言葉少なに話した。
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